16:00 〜 16:15
[SVC30-09] 降灰した道路における車両の走破性能評価
キーワード:火山災害、防災、災害対応、降灰、スコリア、道路交通
火山噴火時における防災対策として、人的被害の軽減と同等に周辺の都市機能の維持は重要である。降灰は直接人命に影響する可能性は低いものの、都市ライフラインの他、道路、鉄道、航空等の交通網を麻痺させる可能性が高い。特に、降灰した道路における車両の運行は、救助や災害復旧に当たる防災関係機関にとっても、避難又は生活を維持する一般市民にとっても重要性が高い。しかし、降灰した道路における車両の走行性能について議論された事例はほぼ無かった。これは、降灰後に交通規制を実施する場合の指標と成り得る。
火山噴火後、降灰した道路における自家用車の走行性能を科学的に検証・評価する為に、我々は舗装路面に火山灰とスコリアを敷いた特設コースにおいて、車両走行実験を行った。実験に用いた市販車は車格、ボディタイプの異なる9車種で、駆動方式は前輪駆動(FWD)、後輪駆動(RWD)及び全輪駆動(AWD)、車両重量は880kg~1600kgである。冬タイヤを装着する1台を除き他は全て夏タイヤを装着している。本実験は一般市民による運転を想定している為、特殊な運転方法や車両の改造等は行わないこととした。また、運転者の違いによる誤差を最小限にする為に、同一の運転者が全ての走行試験を行った。本発表は、火山灰やスコリアに覆われた道路における自家用車の走破性能について議論する。
走破性能試験は、時速5 km/hで舗装路面から火山灰又はスコリアが堆積したコースへと進入し、速度を一定に保持したまま通過を試みた。まず、スコリアが最大30 cmの厚さで堆積した長さ20mの平坦な直線コースの試験では、AWD車は全て通過することが可能であった一方、FWDとRWD車は多くの場合スタックした。次に、火山灰又はスコリアが約10 cm以上の厚さで堆積した勾配5%、長さ30mの登坂コースにおいて同様の試験を実施した。その結果は平坦なコースと同様のものとなり、AWD車は全て通過することが可能であった一方、FWDとRWD車は多くの場合スタックした。次に、タイヤチェーン装着による効果を検証する為に、FWD車の駆動輪に金属又は樹脂製のタイヤチェーンを装着し平坦コースと登坂コースにおいて同様の試験を行った。その結果、タイヤチェーン非装着の場合に比べても到達距離に明確な変化は見られず、同様にスタックした。また、登坂コースの場合は寧ろ到達距離が短くなる傾向が見られた。今回実施した走破性能試験において、AWD車は車種に関わらず全てのコース条件において通過可能であった。一方、FWDとRWD車は火山灰又はスコリアの堆積層厚が約12 cmを超えると、スタックする可能性が高まることが判明した。
火山灰やスコリアが堆積した道路における自家用車の走破性は、タイヤから伝わる駆動力をいかに減衰することなく地面へ伝えるかに懸かっており、それは堆積した火山灰又はスコリア粒子間の摩擦力に大きく依存する。同時に、駆動輪の火山灰・スコリア堆積層への沈み込みを最小限にすることも走破性を高めるカギとなる。何故ならば、タイヤが堆積層へ沈降すると転がり抵抗が増大すると同時に、駆動輪に働く駆動力のベクトルの向きが車両の進行方向から外れる為である。これらは、(1)車両特性、(2)路面状況、の相互関係によって決定される。走破性に寄与する主な車両特性は、駆動方式、電子制御システム、車両重量、タイヤサイズが挙げられる。また、駆動力を発生させる原動機の種類(エンジン又は電気モーター)も走破性に寄与する可能性がある。一方、車両の走破性を大きく左右する路面状況としては、道路に堆積した火山灰・スコリアの層厚、粒径、含水量、路面の傾斜が挙げられ、これらは時間や場所によって変化し得る。また、以上の観点から見て、駆動輪へのタイヤチェーンの装着は火山灰やスコリアが堆積した道路における走破性の向上にほとんど役立たないと考えられる。
なお、本実験の実施に当たり、国土交通省中部地方整備局富士砂防事務所にはコース造成の支援をいただいた。
火山噴火後、降灰した道路における自家用車の走行性能を科学的に検証・評価する為に、我々は舗装路面に火山灰とスコリアを敷いた特設コースにおいて、車両走行実験を行った。実験に用いた市販車は車格、ボディタイプの異なる9車種で、駆動方式は前輪駆動(FWD)、後輪駆動(RWD)及び全輪駆動(AWD)、車両重量は880kg~1600kgである。冬タイヤを装着する1台を除き他は全て夏タイヤを装着している。本実験は一般市民による運転を想定している為、特殊な運転方法や車両の改造等は行わないこととした。また、運転者の違いによる誤差を最小限にする為に、同一の運転者が全ての走行試験を行った。本発表は、火山灰やスコリアに覆われた道路における自家用車の走破性能について議論する。
走破性能試験は、時速5 km/hで舗装路面から火山灰又はスコリアが堆積したコースへと進入し、速度を一定に保持したまま通過を試みた。まず、スコリアが最大30 cmの厚さで堆積した長さ20mの平坦な直線コースの試験では、AWD車は全て通過することが可能であった一方、FWDとRWD車は多くの場合スタックした。次に、火山灰又はスコリアが約10 cm以上の厚さで堆積した勾配5%、長さ30mの登坂コースにおいて同様の試験を実施した。その結果は平坦なコースと同様のものとなり、AWD車は全て通過することが可能であった一方、FWDとRWD車は多くの場合スタックした。次に、タイヤチェーン装着による効果を検証する為に、FWD車の駆動輪に金属又は樹脂製のタイヤチェーンを装着し平坦コースと登坂コースにおいて同様の試験を行った。その結果、タイヤチェーン非装着の場合に比べても到達距離に明確な変化は見られず、同様にスタックした。また、登坂コースの場合は寧ろ到達距離が短くなる傾向が見られた。今回実施した走破性能試験において、AWD車は車種に関わらず全てのコース条件において通過可能であった。一方、FWDとRWD車は火山灰又はスコリアの堆積層厚が約12 cmを超えると、スタックする可能性が高まることが判明した。
火山灰やスコリアが堆積した道路における自家用車の走破性は、タイヤから伝わる駆動力をいかに減衰することなく地面へ伝えるかに懸かっており、それは堆積した火山灰又はスコリア粒子間の摩擦力に大きく依存する。同時に、駆動輪の火山灰・スコリア堆積層への沈み込みを最小限にすることも走破性を高めるカギとなる。何故ならば、タイヤが堆積層へ沈降すると転がり抵抗が増大すると同時に、駆動輪に働く駆動力のベクトルの向きが車両の進行方向から外れる為である。これらは、(1)車両特性、(2)路面状況、の相互関係によって決定される。走破性に寄与する主な車両特性は、駆動方式、電子制御システム、車両重量、タイヤサイズが挙げられる。また、駆動力を発生させる原動機の種類(エンジン又は電気モーター)も走破性に寄与する可能性がある。一方、車両の走破性を大きく左右する路面状況としては、道路に堆積した火山灰・スコリアの層厚、粒径、含水量、路面の傾斜が挙げられ、これらは時間や場所によって変化し得る。また、以上の観点から見て、駆動輪へのタイヤチェーンの装着は火山灰やスコリアが堆積した道路における走破性の向上にほとんど役立たないと考えられる。
なお、本実験の実施に当たり、国土交通省中部地方整備局富士砂防事務所にはコース造成の支援をいただいた。