日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山防災の基礎と応用

2022年5月27日(金) 15:30 〜 17:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、コンビーナ:石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、コンビーナ:宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

16:15 〜 16:30

[SVC30-10] 狭域の降灰分布に対する建物影響につい

*大塚 清敏1、野畑 有秀1、諏訪 仁1久保 智弘2宮城 洋介3 (1.株式会社大林組、2.山梨県富士山科学研究所、3.防災科学技術研究所)

キーワード:降灰、建築機能被害、数値計算、火山灰濃度、降灰深、空調

火山の大規模噴火では,破壊的火山現象の影響の及ばない遠隔地域であっても,建物やインフラ等,都市機能の維持に必要な施設に深刻な降灰被害を及ぼす可能性がある。筆者らは,機能被害と降灰深の関係のひとつとして建物空調設備への降灰影響に着目,屋外設置の室外機・冷却塔を対象として降灰実験を行い,機器の動作に影響を及ぼす降灰深を得た1)。さらに,空調機器の吸気による機器への火山灰侵入において,慣性力による気流への火山灰粒子の追従の遅れを考慮することで,実験で得られた降灰深がやや過小評価されている可能性を数値計算的に示した2)。一方で,都市域には大小様々な建物があり,それらは都市内の気流に大きく影響する。そのため,広域の降灰予測で与えられるような降灰深分布に対し,建物が解像されるような狭い範囲では,地面や空調機器への降灰に非一様性が出ると予想される。本研究は,建物影響による降灰の不均一性の程度について,数値計算によって調べる。
 用いる計算手法は,建物等の障害物を考慮したレイノルズ平均非圧縮流体計算に,粒径別の火山灰粒子の運動方程式,空間濃度の保存式を組み合わせたものである。それにより,流体計算で得られた風の場に対する火山灰の運動を計算する。空気抵抗の抗力係数は火山灰拡散モデルHYSPLIT3)で用いられているものと同じものを用いた。計算領域はいわゆる街区(200~300m四方以内程度)の範囲とし,計算領域の上端および側面から,終端落下速度および風速と同じ速度で単位濃度の火山灰粒子が計算領域内に流入する条件設定としている。任意的ではあるが,ここでは直方体建物(東西36m×南北60m×高さ24m,屋上北東端に東西12m×南北18m×高さ6mのペントハウスを有する)を計算領域中央に置き,風がある場合の降灰分布への建物影響を調べた。建物の長軸に直角方向の東風(風は中程度の強さの風:地上高度10mで風速5.0m/s)についての,異なる粒径(62.5~2000μm)に対する計算では,降灰に対する建物影響は明瞭に出ており,変化の出方は粒径よってかなりの違いのあることが認められた。建物風下側の後流域では,小さい粒子ほど降灰の弱い範囲が風下に伸びており,風上側では降灰の強化が起こり,大きい粒子ほど顕著であった。計算結果は,空調機器等に対する実質的な降灰深が建物影響で少なからず変化することを示唆している。