日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山防災の基礎と応用

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (16) (Ch.16)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、コンビーナ:石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、コンビーナ:宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

11:00 〜 13:00

[SVC30-P02] 日本における降下火砕物の層厚・粒径データに関するデータベースの構築

*竹内 晋吾1、上澤 真平1、石毛 康介1 (1.一般財団法人 電力中央研究所)

キーワード:降下火砕堆積物、層厚、粒径、火山灰、データベース研究

降灰堆積物及び降灰粒子によって引き起こされるハザードとして荷重・吸引・付着がある。屋根の崩壊といった荷重ハザードは大きな降灰量で発生する一方、人体や機器への吸引、人工物・動植物への付着ハザードはより小さい降灰量でも粒径が小さい場合には起こる。従って火山ハザードの観点からは降灰粒径特性が重要である。
 本研究では国内の降灰堆積物に関する層厚や粒径データを既往研究からGIS解析により抽出し、層厚と粒径特性のデータベースの構築を進めている。既往研究でアイソパックマップやアイソプレスマップとして図示されている層厚粒径データをQGIS(ver. 3.10)を用いた解析によって以下の手順で抽出した。
 1.各露頭位置での層厚・粒径を示した図への緯度・経度の付与(ジオリファレンス処理)
 2.各層厚粒径データの図から各露頭地点データの判読と付加(シェープファイル作成)
 3.各層厚粒径データシェープファイル内の各露頭地点での微小円を設定(バッファ処理)
 4.各層厚粒径データの微小円が重なる領域を抽出(交差処理)
 5.交差領域の重心を露頭座標とし、層厚・粒径データと合成する。
以上により、得られた各露頭での層厚(Th)・最大軽石(MP)・最大岩片(ML)・中央粒径(Md)データに加え、噴火口と露頭との距離・方位角を算出し、データテーブル化した。
 現在までにデータベース化された事例では、火山爆発指数(VEI)で2~8の噴火例が含まれる。降灰のアイソパックデータは500を超える噴火例がある(Uesawa et al., Submitted)のに対し、何らかの粒径データが見つかった噴火例は約60例に過ぎない。降灰粒径特性を最も代表するMdに関しては8噴火例しか見つかっていない。Mdは分級分析によって得られた粒径分布データから計算する必要があるが、MPやMLの測定は、分級分析を必要としない簡便な粒径特性の尺度と考えられ、データもより豊富である。データの特徴として、最小層厚は10 cmまでが多く、それを下回る層厚のデータは非常に少ないことも判明した。
 堆積物の粒径特性を最も代表し、分析者依存性も少ないと期待されるMdに着目した結果を述べる。噴火口と露頭の間の方位角に対して中央粒径に対する層厚の比(Th/Md)は変化し、降灰主軸付近で最大値をとることが明らかになった。このことは、同一の噴火の場合、同一の層厚でも主軸から外れるほど粒径が大きいことを意味する。降灰主軸に沿った距離に対してTh/Mdは様々に変化するが、1桁を越える変化ではなかった。Th/Mdと噴出量(マグマ換算体積)の関係を見ると、噴出量が大きくなるほど、降灰主軸付近のTh/Md が大きくなる傾向が明らかになった。噴出量0.1 km3ではTh/Mdが101.0~101.5程度であるが、噴出量10 km3以上では103.0~104.0になる。このことは、同一の層厚でも噴出量が大きい噴火ほど、降灰主軸付近の堆積物のMdが小さいことを意味している。Th/Mdと噴出量の関係の支配要因として、噴出量と継続時間の関係が可能性の一つとして挙げられる。
 今後、軽石や岩片の最大粒径についてもデータベース化を行い、噴煙高度・噴出率の推定を地質学的に行いたい。以上の推定をマグマ特性のデータベース(Takeuchi et al., 2021, JVGR)に照らし、マグマ特性と噴煙ダイナミクス・降下火砕物輸送の関係に迫りたい。

Takeuchi et al. (2021) Relationships between magmatic properties and eruption magnitude of explosive eruptions at Japanese arc volcanoes during the last one hundred thousand years, JVGR 419, 107345.
Uesawa et al. (Submitted) Creating a digital database of tephra fall distribution and frequency in Japan. Submitted to JAV.