日本地球惑星科学連合2022年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山防災の基礎と応用

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (16) (Ch.16)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、コンビーナ:石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、コンビーナ:宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

11:00 〜 13:00

[SVC30-P03] 福徳岡ノ場起源浮遊軽石 伊豆大島での漂着軽石粒子の特徴

*千葉 達朗1金丸 龍夫2 (1.アジア航測株式会社、2.日本大学)

キーワード:軽石いかだ、福徳岡ノ場、軽石粒子

1.はじめに
 福徳岡ノ場の2021年8月噴火は、海底火山における大規模噴火であった(及川ほか,2021)。大量の浮遊軽石が、沖縄各地に漂着し大きな問題となった。発生頻度は低いが、火山災害要因として理解を深める必要がある。浮遊軽石災害としては、桜島の大正噴火の際に、海面を埋め尽くす浮遊軽石により、船で逃げた村民が海上で立ち往生した事例もある。一方で、浮遊軽石の文書記録がない、地質時代における浮遊軽石堆積物を認定するための、粒子の特徴などに関する情報があれば有益であろう。そこで、沖縄や三宅島の漂着軽石を入手するとともに、伊豆大島の海岸で現地調査を行ない、漂着状況と軽石粒子の形状を観察したので、報告する。

2.漂着軽石とエボシガイ
 沖縄本島北部のものは、10月に漂着したものをメルカリで入手した。三宅島の軽石は、11月に坪田付近で採取したもので、神着の野田さんと菊池さんから提供いただいた。軽石の全岩主化学組成はYoshida et al. (2022)と同様な変化傾向を示した。「エボシガイ」は、海面を浮遊する物質に付着して成長する生物で、軽石筏や浮遊軽石でも多く見られる生物である。沖縄の軽石試料には、直長径2㎜程度の小さなエボシガイが付着していた。一方、三宅島の漂着軽石には1cmに達するエボシガイもあった。沖縄付近から黒潮に乗って運ばれている最中に成長したのだろう。最も大きなものでは、直径10㎝の軽石の表面に、エボシガイが数十個付着しているものがあった。浮遊状況を復元するために、水にいれたところ、船のように転覆せずに、安定して浮かぶ性質が確認できた。エボシガイの付着部位は水中側に限られて、空気中側には皆無であることが確認できた。そこで、伊豆大島で現地調査の際に、軽石の粒子を、水に浮かべて確認したところ、エボシガイの有無にかかわらず、水中部と空気中部で、軽石表面の風化程度に大きな差異があることを発見した。以下、このような軽石を「船型軽石」と呼ぶ。空気中は滑らかな丸みを帯びた形状であるのに対し、水中側はほとんど未風化で 、凹凸に富んでいた。このような特徴をもつ軽石が、大きいサイズで割れていないものの半数近くに達するところもあった(図1、伊豆大島西海岸弘法浜での一例)。

3.成因の仮説
 福徳岡ノ場2021年噴火起源の軽石には、”チョコチップ”と呼ばれるクリスタルクロットを中心とする黒っぽいガラス部や、黒色バンドなど、密度的に不均一な部分がある。軽石がランダムに割れたとしても、割れた軽石粒子の中心と重心の位置が一致せず、閉じた気泡の効果で、浮遊した際にいつも同じ方向が上にくるケースが多いと考えられる。このような場合、3ヶ月以上に及ぶ浮遊の間に、空気中にさらされた部分の風化(塩類の析出?)が選択的に進行し、水中部の風化進行は相対的に遅かった可能性ある。エボシガイの付着や成長は、このような異方性をさらに強化した可能性がある。また、断面や平面形状が「船」と似た特徴を示すものがあり、海面の浮遊や海岸漂着に有利であったのではないかと考えている。軽石筏をなして移動する間に、互いに衝突して形状が変化し、たまたまできたと推定している。詳しくはポスター会場で議論したい。

4.今後の課題と計画
 今後。福徳岡ノ場以外の軽石にも類似の特徴を示すもの「船型軽石」がないかを検討する。過去の海岸付近の堆積物の中から、同一の形状の特徴をもつ「船型軽石」を探し、浮遊軽石かどうかの検証を行う。「船型軽石」を水面に浮かべて挙動を観察しながら、重心や浮力の効果などの工学的な検討を行う。

5.文献
及川ほか(2021)小笠原諸島,福徳岡ノ場における2021年8月の噴火.日本火山学会予稿集,120-120.
Yoshida et al. (2022)Variety of the drift pumice clasts from the 2021 Fukutoku-Oka-no-Ba eruption, Island Arc, https://doi.org/10.1111/iar.12441