日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山防災の基礎と応用

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (16) (Ch.16)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、コンビーナ:石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、コンビーナ:宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

11:00 〜 13:00

[SVC30-P05] UAVを用いた地形モデルの精度向上と高速化について –伊豆大島1986年噴火の溶岩流を対象に–

*森 貴章1、小森 惇也1、江川 香1、杉下 七海1、田中 利昌1佐々木 寿1、野中 秀樹1千葉 達朗1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:UAV、活火山、SfM/MVS

1.はじめに
SfM/MVSを活用した地形モデルの作成では基準点(GCP:Ground Control Point)を設置することが精度向上において重要であることがわかっている。しかし、噴火中に火口周辺へ立ち入ることは難しく、基準点の設置は現実的には困難である。
RTK-GNSS搭載型UAV(DJI PHANTOM 4 RTK)とD-RTK 2(高精度 GNSS モバイルステーション)を組み合わせ、基準点なしでの地形モデルの精度を検証した。地形モデル作成ソフトウェアは、DJI Terraを用いた。また、DJI Terraには、リアルタイムマッピング機能が付いており、UAVの飛行中(撮影中)に地形モデルを作成することが可能となっている。高速化の面で、本機能の検証を行った。
本研究では、噴火によって、火口付近の立ち入りが不可能な場合はもちろん、火口周辺の地形が大きく変化し、既往の基準点が失われたようなケースでも、位置やゆがみの補正をすることなく、迅速に差分計算し、噴出量などを求めることも想定した地形モデル作成のための計測方法を検討した。

2.現地での実証実験
2022年1月17日~1月19日に、伊豆大島で実証実験を実施した。使用したUAVはDJI PHANTOM 4 RTKである。対象範囲は、1986年噴火の溶岩流とした(図1)。撮影した画像の枚数は、135枚である。
D-RTK 2を現場から見通せる基準点(高い精度の座標が把握できている箇所)に設置することで、GNSSからの信号を元に、UAVへリアルタイムに補正データを送り、測位データを生成するリアルタイム補正が可能となる。基準点なしでも精度の高い地形モデルが作成できることになる。

3. DJI Terraによる地形モデル作成
135枚の画像(解像度:5472×3648)をDJI Terraで処理した際の処理時間は、高解像度モード(フル:取得した画像の解像度のまま処理)の場合で約5分であった。他ソフトウェアに比べ、操作手順も少なく、処理時間も短いため、高速化の面でDJI Terraを用いることは有効であることがわかった。

4. DJI Terraによるリアルタイムマッピング
DJI Terraには、飛行中(撮影中)に地形モデルを作成するリアルタイムマッピング機能がついている。リアルタイムマッピングでは、画像解像度を下げ、UAVからDJI Terraが入ったPCにデータを転送することで、処理速度を優先し、地形モデルを作成している。実際に、離陸位置から約600m離れた溶岩流を撮影し、飛行中にデータが転送された箇所から地形モデルがリアルタイムで作成されることを確認した。画像解像度を5472×3648から960×640に下げ、地形モデルが作成されていた。

5.精度検証
 今回GCPなしで作成した地形モデルと、2020年にMatrice210で撮影し後処理で基準点補正を行い作成した地形モデルの差分解析を行った(図2)。機材や撮影条件などの違いはあるが、DJI PHANTOM 4 RTKとD-RTK 2を組み合わせることで、GCPありと比べて、精度の差は小さく、十分な精度の地形モデルが作成できることが確認できた(図3)。

6.まとめ
 DJI PHANTOM 4 RTKとD-RTK 2を組み合わせることで、GCPなしでも位置精度の高い地形モデルを作成することができた。DJI PHANTOM 4 RTKの最大飛行時間は30分であり、噴火時の立入規制外からの撮影を考えると、一度に飛行で撮影できる範囲は小さいことが考えられる。今回、RTK-GNSS搭載型UAVを用いることが地形モデルを作成する上で重要なことがわかったため、遠距離飛行が可能なRTK-GNSS搭載型UAVも念頭に、より高精度な地形モデルを短時間に作成できるように、検討を進めていきたい。

本研究は、文部科学省の次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトの一環で行ったものである。