日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山防災の基礎と応用

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (16) (Ch.16)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、コンビーナ:石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、コンビーナ:宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

11:00 〜 13:00

[SVC30-P07] 登山者動態データの防災利用

*宮城 洋介1 (1.国立研究開発法人 防災科学技術研究所)

キーワード:登山者動態データ、富士山、御嶽山、那須岳

近年、とりわけ1980年代以降、日本国内では登山ブームにより多くの人が登山を楽しんできた。登山の対象となる山の中には、火口近傍まで登山者が近づくことのできる活動的な火山がいくつも存在する。多くの犠牲者を出した2014年9月の御嶽山噴火災害では、噴火発生時に多くの登山者が火口近傍にいたが登山者の動向(※ここでは、「おおよその数」と「大まかな位置」)を把握することに時間がかかり、避難指示や救助・捜索活動に際し困難が生じた。草津白根山(本白根山)における2019年噴火においても同様のことが課題となったことから、噴火発生時に登山者や観光客の動向を迅速に把握することは、その後の避難や救助、捜索活動に際して適切な判断をするために重要であると考えられる。また、平時から登山者の動態を把握しておくことで、自治体などがより現実的なバックデータを基にした避難計画を策定することができるようになる。
登山者の動向に係る登山者動態データについて、これまで富士山、御嶽山、那須岳においてデータ取得のための実証実験(それぞれ「富士山チャレンジ」「御嶽山チャレンジ」「那須岳チャレンジ」と呼称)が行われてきた。これらの実験では、登山者・観光客に小型のビーコンを配布し、事前に登山道に設置したレシーバーでこのビーコンを検知・認識をすることでビーコンを持った登山者・観光客の動向をリアルタイムで把握することができるシステムを利用している。取得した登山者動態データを整理・分析することにより、登山道の混雑状況や登山者・観光客の行動特性を把握することができる。
実証実験で得られた登山者動態データの防災利用に向けて、データや解析結果を火山防災の実施主体である自治体や登山者・観光客と共有するために、登山者データの可視化ツールを開発した。このツール上では、得られた登山者動態データをハザードマップなどのハザード情報と組み合わせることで、各種噴火ハザードに対する登山者・観光客の曝露評価、すなわち(簡易的な)人的被害推定を行うことができる。
令和3年度に那須岳で実施された防災訓練では、那須岳チャレンジ2020で得られた結果を基にした訓練シナリオが使われた。また、那須岳チャレンジ2021で得られた結果や他の火山(富士山、御嶽山)で得られた結果と比較することで、登山者動態データの防災利用の標準化について検討を進めている。