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[SVC31-09] ALOS-2 SARデータで検出した硫黄島の急激な隆起とその物理的解釈
キーワード:InSAR、硫黄島、有限要素法、ALOS-2
硫黄島は小笠原諸島に位置する火山島であり、今なお年間数十cm~数mの活発な隆起運動が続いている。Ozawa et al. (2010)はALOSのSARデータを用いて2006~2008年の硫黄島の地殻変動を検出し,島中央部の元山を中心としたすり鉢状の上下変位と島西部の断層帯における上下変位のギャップを報告している。本研究ではALOS-2が撮像した2014年以降現在までのSARデータを用いてInSAR時系列解析を行い、硫黄島の地殻変動の時空間変化を検出する。また、それを説明する物理モデルを構築して定量的な議論を行うものである。
硫黄島の地殻変動は島全体におよぶため、GEONET硫黄島1を島内の参照点としてInSAR解析により島内の相対的な変位量を求め、これにGEONET父島A を固定点とした硫黄島1の変位量を足し合わせることで変位量を算出した。また各干渉画像に含まれる長波長の誤差を平面と仮定し、島内のGNSS観測点を用いて補正した。このように補正した干渉画像を上昇・下降それぞれの軌道について2014年から現在まで複数得た。次に地殻変動の時間変化を得るためにそれぞれの軌道についてSBAS法(Schmidt and Bürgmann, 2003)に基づくInSAR時系列解析を行い、さらに短周期の擾乱を除去するために期間内の平均速度場を計算した。最後に2.5次元解析を行い、衛星視線方向の速度を準上下・準東西方向の速度に変換した。
このようにして得た上下変位場は島中央部の元山を中心としたすり鉢状の変位と島西部の阿蘇台断層を境とした変位のギャップを示した。この変位パターンはOzawa et al. (2010)で報告された2006~2007年のパターンから変化していない。変位の東西成分については、元山付近を中心として収縮する傾向と、阿蘇台断層の西側が局所的に大きく西へ動く傾向が観測された。2014~2021年の約7年の観測期間で鉛直方向に最大約10mの変位が観測された。また東西成分については(1)島西部で最大約4mの西向き変位、(2)元山を中心として最大約1mの東向き変位がそれぞれ観測された。
InSARにより検出した上記の地表変位場を説明するために、有限要素法ソフトウェアCOMSOL Multiphysicsを用いて物理モデルを構築した。モデル領域は硫黄島全体を含む東西30km・南北30 km・深さ6 kmの範囲とした。モデル領域の上面は自由表面とし、形状は陸上および海底面の3次元データを読み込んで作成した。モデル領域の側面、底面はローラー境界とした。媒質は弾性体とし、重力を考慮した。地表変位を駆動するのは硫黄島の地下に仮定した2つの圧力源である。1つ目はカルデラの陥没の進行に伴い形成された深部のシル状マグマだまり、2つ目はカルデラ浅部にリング状に貫入したマグマである。これら2つの領域の圧力を7年間で25MPaだけ増加させたところ、InSARにより検出した変位パターンをおおむね説明できた。さらに島西部の阿蘇台断層を弾性定数が著しく低い領域として組み込んで計算を行ったところ、阿蘇台断層近傍の変位ギャップも再現されるなど、InSAR解析の結果をより良く説明することができた。
硫黄島の地殻変動は島全体におよぶため、GEONET硫黄島1を島内の参照点としてInSAR解析により島内の相対的な変位量を求め、これにGEONET父島A を固定点とした硫黄島1の変位量を足し合わせることで変位量を算出した。また各干渉画像に含まれる長波長の誤差を平面と仮定し、島内のGNSS観測点を用いて補正した。このように補正した干渉画像を上昇・下降それぞれの軌道について2014年から現在まで複数得た。次に地殻変動の時間変化を得るためにそれぞれの軌道についてSBAS法(Schmidt and Bürgmann, 2003)に基づくInSAR時系列解析を行い、さらに短周期の擾乱を除去するために期間内の平均速度場を計算した。最後に2.5次元解析を行い、衛星視線方向の速度を準上下・準東西方向の速度に変換した。
このようにして得た上下変位場は島中央部の元山を中心としたすり鉢状の変位と島西部の阿蘇台断層を境とした変位のギャップを示した。この変位パターンはOzawa et al. (2010)で報告された2006~2007年のパターンから変化していない。変位の東西成分については、元山付近を中心として収縮する傾向と、阿蘇台断層の西側が局所的に大きく西へ動く傾向が観測された。2014~2021年の約7年の観測期間で鉛直方向に最大約10mの変位が観測された。また東西成分については(1)島西部で最大約4mの西向き変位、(2)元山を中心として最大約1mの東向き変位がそれぞれ観測された。
InSARにより検出した上記の地表変位場を説明するために、有限要素法ソフトウェアCOMSOL Multiphysicsを用いて物理モデルを構築した。モデル領域は硫黄島全体を含む東西30km・南北30 km・深さ6 kmの範囲とした。モデル領域の上面は自由表面とし、形状は陸上および海底面の3次元データを読み込んで作成した。モデル領域の側面、底面はローラー境界とした。媒質は弾性体とし、重力を考慮した。地表変位を駆動するのは硫黄島の地下に仮定した2つの圧力源である。1つ目はカルデラの陥没の進行に伴い形成された深部のシル状マグマだまり、2つ目はカルデラ浅部にリング状に貫入したマグマである。これら2つの領域の圧力を7年間で25MPaだけ増加させたところ、InSARにより検出した変位パターンをおおむね説明できた。さらに島西部の阿蘇台断層を弾性定数が著しく低い領域として組み込んで計算を行ったところ、阿蘇台断層近傍の変位ギャップも再現されるなど、InSAR解析の結果をより良く説明することができた。