日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 活動的⽕⼭

2022年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、コンビーナ:前野 深(東京大学地震研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:堀田 耕平(富山大学)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

11:30 〜 11:45

[SVC31-10] 地殻変動連続記録から推定される2018年霧島新燃岳噴火の時のマグマの動き

*吉永 光樹1松島 健2清水 洋2山下 裕亮3小松 信太郎3山崎 健一3 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター、3. 京都大学防災研究所地震予知研究センター宮崎観測所)


キーワード:新燃岳、伸縮計、傾斜計、地殻変動

新燃岳は九州南部の霧島連山を構成する活火山の一つで,近年では2011年と2018年に本格的なマグマ噴火を起こしている活発な火山である.2018年の噴火では,3月1日に噴火が発生し,5日夜から火山性微動の振幅が増加,噴煙量も増えて,6日に火口に溶岩が流出していることが確認された.爆発的噴火は6日に始まり,6日と7日で計34回発生した(気象庁,2018).本研究では伸縮計と傾斜計データを用いて,2018年の新燃岳噴火時に記録された変化を解析するとともに,噴火時にどのような現象が地下で起きていたかを空間的かつ時間的に高い分解能で明らかにする.
伸縮計は京都大学伊佐観測坑道に設置されている横坑式伸縮計を使用した.伸縮計は基準尺(スーパーインバール)の長さは30 mであり,E1~E3の3成分で構成されている.E1は2018年噴火時の収縮源が推定されている方向,E2はE1と直交する方向に延びている.傾斜計は気象庁高千穂河原観測点,大浪池南西観測点,韓国岳北東観測点,栗野岳西観測点と防災科学技術研究所夷守台観測点,万膳観測点の6点の孔井内傾斜計データを使用した.伸縮計と気象庁の傾斜計のデータは1Hzサンプリング,防災科学技術研究所の傾斜計データは20Hzサンプリングで収録されている.伸縮計や傾斜計は潮汐の影響を受けるため,元データを1分間で平均処理してリサンプリングし,潮汐解析ソフトBAYTAP-G(石黒他,1984)を用いて潮汐成分を取り除いた.次に,上田他(2010),木村他(2015)を参考に降水補正を行い,線形トレンドを補正した.圧力源推定にはMogi(1958)の解析解を用いてグリッドサーチで最適値を求めた.
伸縮計と傾斜計では,3月5日14時頃から8日12時頃にかけて大きな変化が認められ,この変化は新燃岳の北西深部にある圧力源の膨張・収縮によるものと考えた.これは噴煙量が増加し,火口に溶岩が流出した時期と対応する.5日14時から6日6時までは歪の成分比や傾斜ベクトルが4つの時間帯で変化しており,この期間をPhase1,6日6時から8日12時をPhase2と分類した.Phase1, 2で単一の球状圧力源を仮定すると新燃岳から北西に約11km離れた深さ6.8kmに収縮源(圧力源A)が推定された.Phase2では圧力源Aから南東に約3.6km離れた深さ6.5kmに収縮源(圧力源B)が推定された. Phase1での圧力源Aの体積変化量は -3×105m3,Phase2での圧力源Bの体積変化量は -3.4×106m3と推定された.以上より,Phase1では主に圧力源Aで収縮が起き,Phase2では圧力源Bが収縮し火口にマグマを供給したと考えられる.