日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 活動的⽕⼭

2022年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、コンビーナ:前野 深(東京大学地震研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:吉田 健太(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、前野 深(東京大学地震研究所)

15:30 〜 15:45

[SVC31-17] 伊豆大島砂の浜の漂着軽石は福徳岡ノ場2021年噴火由来か?

*青木 かおり1平峰 玲緒奈2石村 大輔2,1渡辺 樹2鈴木 毅彦2,1 (1.東京都立大学火山災害研究センター、2.東京都立大学大学院都市環境科学研究科)

キーワード:福徳岡ノ場、漂着軽石、伊豆大島

2021年8月に小笠原諸島の海底火山福徳岡ノ場が噴火したことにより、大量の漂流軽石が発生した。軽石はラフト(筏)のようになって黒潮反流にのって漂流し、2021年10月以降、大東島・奄美・沖縄諸島へと漂着し、その後は関東地方の沿岸や、11月下旬には伊豆諸島、海外では台湾、フィリピンなどに漂着したことが報告されている。我々は、このような漂着軽石の形態的な特徴が、最初の漂着から時間経過とともに、どのような変化がするのかを解明するために、各地で漂着軽石の採取を行い、軽石の形態、色、構造、摩耗度、粒径などの記録をとっている。
沖縄本島などに初期に漂着した福徳岡ノ場2021年噴火由来と考えられる軽石群の中には、多様な形態の軽石が見られる(平峰ほか、本大会)。その中でも各地に漂着した軽石の大半は「チョコチップ」に例えられる玄武岩マグマに由来する磁鉄鉱などの苦鉄質鉱物を中心とした黒色の集合体(Yoshida et al., 2022) を取り込んだ良く発泡した灰色の軽石であり、鉱物は単斜輝石、斜長石が多く、カンラン石も含まれている。軽石の基質部分をなす火山ガラスの化学組成はトラカイトである(Yoshida et al., 2022; 平峰ほか、本大会)。
このような岩石記載学的な特徴を踏まえて、各地で収集した上記の軽石試料が福徳岡ノ場由来の軽石であるか否かについて検証を進めている。その中で、2021年11月17日午後に、伊豆大島南東部、砂の浜南東端において採取された軽石群から、無作為に軽石を選択したところ、直方輝石を含み化学組成もトラカイトではない軽石が見つかった。色調などの特徴から、本地点で採取した軽石の多くは福徳岡ノ場由来の軽石とは異なる可能性が高い。
日本列島近海において軽石の漂流という現象は1986年の福徳岡ノ場の噴火、1924年の西表海底火山の噴火でも確認されている。また、噴出物総量あるいは海洋への流出量という点で上記の事例ほど大きくはなかったものの、1914年の桜島、1929年の北海道駒ケ岳、1952年の明神礁の噴火においても、軽石が漂流したり周辺の海浜に漂着するという事例が確認されている。一方で、平峰ほか(2020)では、いったん陸域に堆積した火山砕屑物がさまざまプロセスで海域に流入して噴火イベントがない平常時でも軽石が海浜に漂着することを指摘している。今回、伊豆大島砂の浜で採取した軽石の起源や漂着した時期については、様々なケースを考慮して慎重に検討する必要があるだろう。

引用文献
平峰ほか 2020. 日本列島の現世海岸における漂着軽石の分布とその給源. 日本地理学会発表要旨集97: 157. Doi: 10.14866/ajg.2020s.0_238
平峰ほか 本大会. 福徳岡ノ場2021年噴火による軽石の漂着時期・漂着量・粒径分布.
Yoshida et al. 2022. Variety of the drift pumice clasts from the 2021 Fukutoku-Oka-no-Ba eruption, Japan. Island Arc. Doi: 10.1111/iar.12441