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[SVC31-19] 福徳岡ノ場2021年噴火で発生した漂流軽石の特徴と噴火推移との関係
キーワード:福徳岡ノ場、漂流軽石、衛星画像、噴火推移、海底火山
福徳岡ノ場2021年噴火では大規模な漂流軽石が発生し、南西諸島から伊豆諸島に至るまでの日本各地の沿岸や東南アジアに漂着した。漂流軽石は船舶の航行や漁業活動に支障をきたす等の社会的影響を与えており、その現象の理解は災害対策において重要である。また、一般に海底火山は地質調査が困難である為、噴火活動の実態が十分に明らかでない。その為、漂流軽石は海底火山の物質科学的手段による研究を可能とする貴重な現象である。
本研究では竹内ほか(2022)と伴に、漂流軽石の特性と噴火現象の解明を目指し、漂着情報等のニュース・SNS等の情報収集や現地調査、室内実験及び衛星画像解析を実施した。その結果、噴火推移の変遷に対応する漂流軽石の物質的変化が明らかとなったのでここに報告する。
現地調査は沖縄本島の南部から中部の沿岸において10月19~20日及び11月1日~3日に、伊豆大島において12月22~24日に実施した。漂流軽石については定面積採集装置を開発して洋上採集し、室内での水槽を用いた浮遊再現実験によって漂流時の層厚や漂流濃度及び軽石充填率を求めた他、乾燥させ粒度分析を行った。また、漂着軽石については粒度分析及び構成成分分析を実施した。構成成分分析ではまず軽石を色と気泡の特徴を基に灰色軽石、黒色軽石、黒色-灰色縞状軽石、Pale Gray軽石、茶色軽石、暗茶色軽石に分類し、漂着試料の8~11.2 mmの粒子を一地点当たり300粒以上鑑定した。
これらの地質調査及び室内実験から、日本沿岸に漂着した漂流軽石は構成成分と漂着規模の違いから3つのタイプ(タイプA~C)に分類された。タイプAは構成物のほとんどが灰色軽石であるのが特徴で、10月下旬に沖縄本島南部に漂着した軽石で観察される。タイプBは構成物の大部分が灰色軽石であるものの、他タイプも若干産出するのが特徴で、伊豆大島に11月中旬に漂着した軽石で観察される。タイプCは灰色軽石以外の軽石が普遍的に産出するのが特徴で、10月中旬に沖縄本島北部から南部にかけて小規模に漂着した軽石で観察される。
次に、静止衛星ひまわり8号の衛星データを用いて噴火推移を観察した結果、噴火は3フェーズ(フェーズ1~3)に大別され、それぞれ漂流軽石(漂流軽石グループ1~3)の発生が確認された。フェーズ1は8月13日5時57分から20時頃までの比較的大きな傘型噴煙を形成する噴火、フェーズ2は8月13日の20時頃から8月14日の正午頃までの比較的短期な傘型噴煙形成を伴う断続的な噴火、フェーズ3は8月14日の正午頃から8月15日にかけて傘型噴煙を形成しない断続的な噴火である。
さらに、ESA等の衛星データを用いて各漂流軽石グループの漂流経路を追跡したところ、漂流の早い段階からグループ間の離隔が認められ、さらに西進順序の入れ替わりが途中で発生したことが判明した。その後、グループ毎にある程度のまとまりをもって、順次南西諸島に漂着したことが分かった。まずフェーズ3で発生した小規模なグループ3が10月4日に南大東島、10月13日頃に沖縄本島に到達した。また、フェーズ2で発生したグループ2が10月10日に奄美群島に到達し、一部は北上して11月中旬に伊豆諸島に到達した。フェーズ1で発生したグループ1は最も漂流面積が大きく、10月下旬以降に沖縄本島に到達した。
以上の衛星画像解析と地質調査の結果を併せると、漂着時期・場所による漂流軽石の構成成分の違いは、噴火フェーズに対応する漂流軽石グループの違いを反映したものと考えられる。すなわち、漂流軽石グループ1がタイプA、グループ2がタイプB、グループ3がタイプCの構成成分をもつと考えられる。このことから、噴火フェーズ1では均質な灰色軽石が多量に噴出し、噴火フェーズ2から3にかけて黒色軽石や縞状軽石が増加することが明らかとなった。このような噴火推移の変遷に対応する噴出物の系統的な変化は、噴火ダイナミクスの変遷を反映している可能性がある。
竹内ほか2022(JpGU), 福徳岡ノ場2021年噴火漂流軽石の性質:ポロシメトリーから推定する軽石の空隙構造と浮遊特性
本研究では竹内ほか(2022)と伴に、漂流軽石の特性と噴火現象の解明を目指し、漂着情報等のニュース・SNS等の情報収集や現地調査、室内実験及び衛星画像解析を実施した。その結果、噴火推移の変遷に対応する漂流軽石の物質的変化が明らかとなったのでここに報告する。
現地調査は沖縄本島の南部から中部の沿岸において10月19~20日及び11月1日~3日に、伊豆大島において12月22~24日に実施した。漂流軽石については定面積採集装置を開発して洋上採集し、室内での水槽を用いた浮遊再現実験によって漂流時の層厚や漂流濃度及び軽石充填率を求めた他、乾燥させ粒度分析を行った。また、漂着軽石については粒度分析及び構成成分分析を実施した。構成成分分析ではまず軽石を色と気泡の特徴を基に灰色軽石、黒色軽石、黒色-灰色縞状軽石、Pale Gray軽石、茶色軽石、暗茶色軽石に分類し、漂着試料の8~11.2 mmの粒子を一地点当たり300粒以上鑑定した。
これらの地質調査及び室内実験から、日本沿岸に漂着した漂流軽石は構成成分と漂着規模の違いから3つのタイプ(タイプA~C)に分類された。タイプAは構成物のほとんどが灰色軽石であるのが特徴で、10月下旬に沖縄本島南部に漂着した軽石で観察される。タイプBは構成物の大部分が灰色軽石であるものの、他タイプも若干産出するのが特徴で、伊豆大島に11月中旬に漂着した軽石で観察される。タイプCは灰色軽石以外の軽石が普遍的に産出するのが特徴で、10月中旬に沖縄本島北部から南部にかけて小規模に漂着した軽石で観察される。
次に、静止衛星ひまわり8号の衛星データを用いて噴火推移を観察した結果、噴火は3フェーズ(フェーズ1~3)に大別され、それぞれ漂流軽石(漂流軽石グループ1~3)の発生が確認された。フェーズ1は8月13日5時57分から20時頃までの比較的大きな傘型噴煙を形成する噴火、フェーズ2は8月13日の20時頃から8月14日の正午頃までの比較的短期な傘型噴煙形成を伴う断続的な噴火、フェーズ3は8月14日の正午頃から8月15日にかけて傘型噴煙を形成しない断続的な噴火である。
さらに、ESA等の衛星データを用いて各漂流軽石グループの漂流経路を追跡したところ、漂流の早い段階からグループ間の離隔が認められ、さらに西進順序の入れ替わりが途中で発生したことが判明した。その後、グループ毎にある程度のまとまりをもって、順次南西諸島に漂着したことが分かった。まずフェーズ3で発生した小規模なグループ3が10月4日に南大東島、10月13日頃に沖縄本島に到達した。また、フェーズ2で発生したグループ2が10月10日に奄美群島に到達し、一部は北上して11月中旬に伊豆諸島に到達した。フェーズ1で発生したグループ1は最も漂流面積が大きく、10月下旬以降に沖縄本島に到達した。
以上の衛星画像解析と地質調査の結果を併せると、漂着時期・場所による漂流軽石の構成成分の違いは、噴火フェーズに対応する漂流軽石グループの違いを反映したものと考えられる。すなわち、漂流軽石グループ1がタイプA、グループ2がタイプB、グループ3がタイプCの構成成分をもつと考えられる。このことから、噴火フェーズ1では均質な灰色軽石が多量に噴出し、噴火フェーズ2から3にかけて黒色軽石や縞状軽石が増加することが明らかとなった。このような噴火推移の変遷に対応する噴出物の系統的な変化は、噴火ダイナミクスの変遷を反映している可能性がある。
竹内ほか2022(JpGU), 福徳岡ノ場2021年噴火漂流軽石の性質:ポロシメトリーから推定する軽石の空隙構造と浮遊特性