日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 活動的⽕⼭

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (25) (Ch.25)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、コンビーナ:前野 深(東京大学地震研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

11:00 〜 13:00

[SVC31-P11] 伊豆大島におけるドローンを用いた熱赤外観測

*安藤 忍1鬼澤 真也1 (1.気象研究所)

キーワード:ドローン、熱赤外観測、伊豆大島

伊豆大島火山では、噴火履歴などの研究(Nakamura, 1964や遠藤他, 1988)から、36〜38年毎に107tonオーダーの噴火が報告されており、前回の噴火活動(1986〜1990年)からすでに30年以上が経過し、遠くない将来に噴火の発生が予想されている。気象研究所では、長期の地殻変動観測により、マグマ蓄積を示唆する山体膨張を捉えてきたが、前回の噴火時は、地殻変動は数年前から停滞しており(渡辺, 1998)、熱や火山ガスに関する前兆現象が検出されたとの報告(鍵山・辻, 1987や平林ほか, 1988)もあることから、現5か年計画(令和元〜5年度)の「火山活動の監視・予測に関する研究」において、新たに熱観測を開始した。観測方法は、地表面と空中からのアプローチの2本立てとし、前者については令和元年より総合熱収支観測(鬼澤他, 2020火山学会)にて、後者については令和2年度後半からドローンによる空中熱赤外観測を実施している。本発表では、伊豆大島で取り組んでいる空中熱赤外観測の概要と現状について報告する。
観測に使用したドローンはDJI Matrice210RTKおよび300RTKで、熱カメラはDJI Zenmuse XT2を使用し、三原山山頂火口を含む約850m四方を対象に、これまでに季節を変えて合計4回実施した。ドローンの離発着場所は、三原山山頂火口展望台付近(1,3,8月実施)と有事を想定した観測として火口から北北東約3kmにある温泉ホテル近傍の気象研究所観測局舎(12月実施)を選択し、日射による影響を軽減するため完全日没後に実施した。ドローンの飛行操作および撮影はすべて業者委託とし、対象領域のオルソモザイク画像を作成するために、30cm/pixel程度の分解能で、解析ソフト(Pix4dmapper)推奨値の90%のオーバーラップ/サイドラップ率で取得できるように予め自動航行ルートを作成し、ドローンの離発着場所と使用機体のバッテリー寿命を考慮して、対象領域を複数回に分けて観測した。データは位置情報のEXIFを含む温度情報付きJPEG形式(R_JPEG)で取得し、温度観測値の精度を担保するために、地上観測を実施している熱収支観測装置および観測時に準備した銅板を温度既知点として活用し、それぞれの上空において複数の高度からも観測した。
主な観測結果は別表のとおりであるが、1月および12月の観測では、対象範囲の一部ルートにおいて電波障害が要因と考えられる明らかな位置情報(高度)エラーが、8月の観測では、天候不良のため対象領域の一部においてデータの欠損が生じた。エラーに対する対処法や温度観測値の補正についてはまだ検討中の段階であるが、約3100〜4000枚のデータを使って各観測日における山頂火口近傍のオルソモザイク画像を作成した。その結果、火口底およびB火口の最高温度は、約28〜44℃および36〜42℃(未補正)を検出した。今後、得られた温度観測値の補正についてさらに精査・検討した上で放熱量を計算し、観測方法を含めたドローンによる熱観測について火山活動評価への有効性について検討する。