日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 活動的⽕⼭

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (25) (Ch.25)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、コンビーナ:前野 深(東京大学地震研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

11:00 〜 13:00

[SVC31-P13] 伊豆大島南東部、龍王崎域における火成活動史と岩石学的特徴

*内山 涼多1、八束 翔2坂本 泉3 (1.東海大学大学院海洋学研究科、2.(有)アートマリン、3.東海大学海洋学部)

キーワード:伊豆大島

伊豆大島は,伊豆小笠原弧最北端に位置する活火山である.3つの旧火山体を基盤とし,下位から泉津層群,古期大島層群,新期大島層群に区分されている.これまで,伊豆大島の沿岸域では,水とマグマが接触することで生じるマグマ水蒸気爆発が度々発生している。伊豆大島では,沿岸域に民家が集中していることから,沿岸域における爆発的噴火を理解することは極めて重要である.
 本研究では,伊豆大島南東部龍王崎域の火山噴出物の分布から,同地域の火山活動様式について考察した.龍王崎域に分布する海食崖は下位から龍王崎溶岩,龍王崎角礫岩層,波浮角礫岩層が分布する。さらに龍王崎角礫岩層及び波浮角礫岩層は,岩相の違いから下部,中部,上部に細分した.
 龍王崎溶岩は,龍王崎域の最下部に位置し, 暗赤色又は黒色を呈し、溶岩表面にアア-クリンカーを形成する.本溶岩は,伊豆大島南東部の古期大島層群相当であるが,同時期に活動したと推定される下原溶岩よりも高いMg値(43~46)を示す.
 龍王崎角礫岩層(最大層厚は約20 m)は,龍王崎溶岩の上位に堆積する角礫岩層で,基質は細粒な灰色火山灰から構成される.下部層は,数cm幅の細かな平行ラミナが多数発達する.下部層は,厚さ数cmの細かな平行ラミナが多数発達する.中部層は,20 cm前後の角礫を含み、一部でボグサグ構造が観られる.上部層は,クロスラミナ(周期は数m〜10m)を伴い,下位の層を削って堆積していることから激しい爆発が推定される.また,ボムサグ構造から推定される飛来方向は、龍王崎沖に噴出起源を持つことが示唆される. さらに,岩相の特徴から穏やかな活動から激しい爆発活動へと遷移したことが推測される.記載岩石学的特徴及び全岩化学分析の結果,本層に含まれる岩片は, 筆島火山,龍王崎溶岩の2つの溶岩を起源に持つことが明らかとなった.
 波浮角礫岩層(最大層厚は25 m)は,龍王崎角礫岩層の上位に堆積し,9世紀に波浮を起源とするマグマ水蒸気爆発によって堆積したと考えられる.下部ではクロスラミナを伴うことから,マグマ水蒸気爆発よる火砕サージが発生したことが示唆される.礫の形状より噴火時の環境は,海岸に近かったことが推定できる.本層に含まれる岩片は記載岩石学的特徴及び全岩化学分析の結果,筆島火山、龍王崎溶岩、古期大島層群溶岩,および波浮溶岩起源岩片等、下位に分布する全ての岩石が観られた.
 以上のことより伊豆大島南東部龍王崎周辺では,火砕サージや巨大な噴石等の激しい爆発を伴うマグマ水蒸気爆発が複数回起こっていることが確認された.