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[SVC31-P14] 福徳岡ノ場2021年噴火漂流軽石の性質:ポロシメトリーから推定する軽石の空隙構造と浮遊特性
キーワード:福徳岡ノ場2021年噴火、漂流軽石、ポロシメトリー、空隙構造、密度
2021年8月13日~15日に起こった福徳岡ノ場噴火により、軽石が大量に放出され、太平洋上を漂流した。火山現象として注目が集まることに加え、10月以降、鹿児島県や沖縄県の海岸に到達し、社会にも様々な影響を与えている。従って、漂流軽石の性質を明らかにすることは火山研究・災害研究上、重要と考えられる。本研究では、石毛ほか(2022)と伴に、火山岩ポロシメトリーの手法を基に軽石の浮遊性に係る空隙構造・密度特性の解明を目指している。
試料の採集は沖縄本島において10月19・20日(伊計島付近)と11月2・3日(安座真付近)に行った。漂流軽石として洋上で採集した試料の一部は海水と共に容器に密閉し、ポロシメトリー直前まで採取時の含水状態を維持した。容器内で大半の粒子は浮遊状態であったが、採集後に沈降した少数の粒子も測定対象とした。漂流軽石の粒径分布は2から4 mm付近にピークを持つ(石毛ほか, 2022) 。2から4 mm粒径の試料の測定には現状では困難があるため、可能な限り小さい、体積が0.1~0.6 cm3の粒子(直径6~10 mmの球相当体積)を17試料選んでポロシメトリーを行った。粒子体積測定には、かさ密度測定装置 (Micromeritics 製 GeoPyc1365)を用いた。 GeoPyc1365は疑似流体として粉体を用いて不定形の試料の体積を測定できる。粉体として GeoPyc1365標準のDryFloの他、市販のガラスビーズを用いることができる。軽石粉砕物の固相密度および軽石粒子内の固相と孤立空隙の合計体積の測定にはHeガスピクノメーター(Quantachrome製Pentapycnometer)を用いた。固相密度測定のために8 mm (-3Φ) から500 μm (1Φ)の粒径の同質量の浮遊軽石粒子を粉砕し、粉末試料を作成した。細かい粒径ほど多数の粒子を粉砕している。
本研究では全空隙率・連結空隙率・孤立空隙率・乾燥粒子密度・固相密度を得た。得られた重要な結果として以下が挙げられる。なお5試料については固相と孤立空隙の合計体積の測定が十分な精度でできなかった。
1.浮遊粒子の粒径が8 mmから500 μm へ小さくなるほど、固相密度は2.66から2.52 g/cm3へと小さくなる。
2.軽石の乾燥密度は0.68 から0.40 g/cm3をとる。固相密度を2.62 g/cm3と仮定すると74vol%から85vol%の全空隙率が計算される。
3.連結空隙率は沈降粒子が33-55 vol%、浮遊粒子が18-44vol%で、浮遊粒子よりも沈降粒子がやや高い。
4.全空隙率と連結空隙率の関係及び浮遊粒子と沈降粒子の特徴は Havre 2012年海底噴火の例(Mitchell et al., 2021)とよく似ている。
5.全空隙率ー連結空隙率の関係は高圧下での発泡組織を可能な限り急冷している減圧発泡実験(Takeuchi et al., 2009)の結果に似ている。
1の特徴は、粒径が小さくなるに従い、高密度の斑晶を失った粒子が浮遊粒子として存在していることを反映している可能性がある。今後、記載岩石学的な検討を行う予定である。3の特徴は連結空隙率が大きい粒子内への海水の侵入が粒子の浮遊性喪失の支配要因と解釈できる。5の結果は、福徳岡ノ場での浅海噴火という条件が軽石の減圧発泡組織の急冷に効果的に働いたことを示唆する。
今後は、含水粒子質量測定のデータを含め、一連のポロシメトリーを行い、漂流軽石の含水密度、含水率、空隙内水飽和度も明らかにする予定である。
石毛ほか2022, 福徳岡ノ場2021年噴火で発生した漂流軽石の特徴と噴火推移との関係, 日本地球惑星科学連合2022年大会
Mitchell et al. (2021) BV, 83, 80.
Takeuchi et al. (2009) EPSL, 283, 101-110.
試料の採集は沖縄本島において10月19・20日(伊計島付近)と11月2・3日(安座真付近)に行った。漂流軽石として洋上で採集した試料の一部は海水と共に容器に密閉し、ポロシメトリー直前まで採取時の含水状態を維持した。容器内で大半の粒子は浮遊状態であったが、採集後に沈降した少数の粒子も測定対象とした。漂流軽石の粒径分布は2から4 mm付近にピークを持つ(石毛ほか, 2022) 。2から4 mm粒径の試料の測定には現状では困難があるため、可能な限り小さい、体積が0.1~0.6 cm3の粒子(直径6~10 mmの球相当体積)を17試料選んでポロシメトリーを行った。粒子体積測定には、かさ密度測定装置 (Micromeritics 製 GeoPyc1365)を用いた。 GeoPyc1365は疑似流体として粉体を用いて不定形の試料の体積を測定できる。粉体として GeoPyc1365標準のDryFloの他、市販のガラスビーズを用いることができる。軽石粉砕物の固相密度および軽石粒子内の固相と孤立空隙の合計体積の測定にはHeガスピクノメーター(Quantachrome製Pentapycnometer)を用いた。固相密度測定のために8 mm (-3Φ) から500 μm (1Φ)の粒径の同質量の浮遊軽石粒子を粉砕し、粉末試料を作成した。細かい粒径ほど多数の粒子を粉砕している。
本研究では全空隙率・連結空隙率・孤立空隙率・乾燥粒子密度・固相密度を得た。得られた重要な結果として以下が挙げられる。なお5試料については固相と孤立空隙の合計体積の測定が十分な精度でできなかった。
1.浮遊粒子の粒径が8 mmから500 μm へ小さくなるほど、固相密度は2.66から2.52 g/cm3へと小さくなる。
2.軽石の乾燥密度は0.68 から0.40 g/cm3をとる。固相密度を2.62 g/cm3と仮定すると74vol%から85vol%の全空隙率が計算される。
3.連結空隙率は沈降粒子が33-55 vol%、浮遊粒子が18-44vol%で、浮遊粒子よりも沈降粒子がやや高い。
4.全空隙率と連結空隙率の関係及び浮遊粒子と沈降粒子の特徴は Havre 2012年海底噴火の例(Mitchell et al., 2021)とよく似ている。
5.全空隙率ー連結空隙率の関係は高圧下での発泡組織を可能な限り急冷している減圧発泡実験(Takeuchi et al., 2009)の結果に似ている。
1の特徴は、粒径が小さくなるに従い、高密度の斑晶を失った粒子が浮遊粒子として存在していることを反映している可能性がある。今後、記載岩石学的な検討を行う予定である。3の特徴は連結空隙率が大きい粒子内への海水の侵入が粒子の浮遊性喪失の支配要因と解釈できる。5の結果は、福徳岡ノ場での浅海噴火という条件が軽石の減圧発泡組織の急冷に効果的に働いたことを示唆する。
今後は、含水粒子質量測定のデータを含め、一連のポロシメトリーを行い、漂流軽石の含水密度、含水率、空隙内水飽和度も明らかにする予定である。
石毛ほか2022, 福徳岡ノ場2021年噴火で発生した漂流軽石の特徴と噴火推移との関係, 日本地球惑星科学連合2022年大会
Mitchell et al. (2021) BV, 83, 80.
Takeuchi et al. (2009) EPSL, 283, 101-110.