11:00 〜 13:00
[SVC31-P17] 噴火微動の高周波地震波の形状特性に基づいた噴火規模および継続時間の関係
キーワード:爆発的噴火、火山性地震、火山監視
プリニー式噴火のような長時間継続する爆発的噴火では、噴火継続中にその規模や継続時間を把握することが防災上重要となる。一般的に、噴火が長期化すればその規模もまた大きくなると考えられているが、噴火規模と継続時間の定量的な関係は明らかにされていない。また、噴火継続中にこれらの値を即時的に推定する手法も確立されていない。
Mori and Kumagai (GJI, 2019)は、火山地域では5-10 Hz帯において散乱波が卓越してS波の放射パターンが等方的になることに着目し、複数の火山の噴火微動について震源振幅(As)と噴火規模との関係を調べた。Asは最大振幅を含む10秒窓での平均振幅に幾何減衰と非弾性減衰の効果を補正した値で、震源での最大振幅に相当する。噴火微動のAs は噴煙高度とスケーリング関係にあり、さらにAsは噴出率(q)とも比例関係にあった。上記の結果は、短い時間間隔でAsを推定し積算することで、各時刻のAsの値や積算値から、対応する時刻の噴煙高度や予測される噴出量を算出できることを示唆している。しかしながら、噴火微動波形の特徴やAsと継続時間の関係性については明らかにされていない。そこで本研究では、霧島新燃岳、エクアドルのトゥングラワ火山、アラスカのパブロフ火山で発生したサブプリニー式噴火に伴う微動を対象として、エンベロープ地震波形の形状的特徴を調べた。
噴火微動波形に対して5-10 Hz のバンドパスフィルタを適用し、エンベロープ波形を求め、10秒の移動窓を用いて平均振幅を算出した。そして各窓に対し、S波の等方輻射の仮定に基づいて幾何減衰と非弾性減衰を補正し、各窓における震源での振幅(Ask)を求めた。ここで、エンベロープ地震波形はAskの関数(source amplitude function; SAF)として表現される。またAskの最大値および累積値として、微動波形の最大振幅にあたるAsと累積震源振幅Isをそれぞれ推定した。さらにエンベロープ地震波形の継続時間(T)を表す指標として、エンベロープ幅(p = Is/As)を算出した。求めたSAF波形は山なりの形状をしており、次の3つの期間に分けることができる。τ1:振幅がノイズレベルから徐々に増大、τ2:振幅の大きさがピークレベル付近で安定、τ3:振幅がノイズレベルまで減少。そこでSAF波形を高さがAs、底辺をT、面積をIsとする台形で近似できると仮定し、コサイン窓関数を用いて各波形の形状をフィッティングした。そして、求めた台形プロファイルの高さαと立ち上がりの傾き(γ = α/τ1)、AsやIs、p、Tといった地震波形を特徴づけるパラメータを比較した。結果として、pはAs、Isとべき乗の関係をもち、γが小さいほどTおよびτ2は長くなる傾向にあった。しかしながら、TとAs、Isの間には明瞭な相関は見られなかった。
Mori and Kumagai (2019)では、qとAsの比例関係が理論的に導出されている。このモデルでは、qはクラック状または円筒状の火道の断面積(σ)とマグマの上昇速度(v)の積として表される。このとき、上記で示したSAF波形の特徴は次のように解釈できる。噴火開始とともにσおよびvが増加することにより、qおよびAsが増大する。その後火道の状態が安定し、qとAsがピーク付近で保たれる状態が一定期間続くが、噴火終盤で火道の状態が不安定化し、qおよびAsが減少する。さらにγとTの関係を考慮すると、σおよびvがピークに達するまでに要する時間、つまりτ1が長いほどTも長くなると解釈できる。よってサブプリニー式噴火のような長時間継続する爆発的な噴火では、噴火規模や継続時間は、火道の最大開口量や最大のマグマ上昇速度、そしてこれらの値がピークに至るまでの増加率によって制約されている可能性がある。
本研究の結果は、高周波帯におけるエンベロープ地震波形の形状が、噴火規模、継続時間の推定や噴出活動の推移を予測する上で有用であることを示している。推定したγ とT の関係を用いて各SAF波形のγの値から対応するTを計算したところ、ばらつきはあるものの実際の微動波形のTを比較的再現することができた。したがって、噴火微動の波形形状が台形で近似できるとき、その立ち上がりの期間の傾きからおおよその微動の継続時間を推定できるかもしれない。火山ごとの傾向の違いを議論するためにも、今後他の火山についても同様の手法を用いて微動波形の形状特徴を調べていく必要がある。
Mori and Kumagai (GJI, 2019)は、火山地域では5-10 Hz帯において散乱波が卓越してS波の放射パターンが等方的になることに着目し、複数の火山の噴火微動について震源振幅(As)と噴火規模との関係を調べた。Asは最大振幅を含む10秒窓での平均振幅に幾何減衰と非弾性減衰の効果を補正した値で、震源での最大振幅に相当する。噴火微動のAs は噴煙高度とスケーリング関係にあり、さらにAsは噴出率(q)とも比例関係にあった。上記の結果は、短い時間間隔でAsを推定し積算することで、各時刻のAsの値や積算値から、対応する時刻の噴煙高度や予測される噴出量を算出できることを示唆している。しかしながら、噴火微動波形の特徴やAsと継続時間の関係性については明らかにされていない。そこで本研究では、霧島新燃岳、エクアドルのトゥングラワ火山、アラスカのパブロフ火山で発生したサブプリニー式噴火に伴う微動を対象として、エンベロープ地震波形の形状的特徴を調べた。
噴火微動波形に対して5-10 Hz のバンドパスフィルタを適用し、エンベロープ波形を求め、10秒の移動窓を用いて平均振幅を算出した。そして各窓に対し、S波の等方輻射の仮定に基づいて幾何減衰と非弾性減衰を補正し、各窓における震源での振幅(Ask)を求めた。ここで、エンベロープ地震波形はAskの関数(source amplitude function; SAF)として表現される。またAskの最大値および累積値として、微動波形の最大振幅にあたるAsと累積震源振幅Isをそれぞれ推定した。さらにエンベロープ地震波形の継続時間(T)を表す指標として、エンベロープ幅(p = Is/As)を算出した。求めたSAF波形は山なりの形状をしており、次の3つの期間に分けることができる。τ1:振幅がノイズレベルから徐々に増大、τ2:振幅の大きさがピークレベル付近で安定、τ3:振幅がノイズレベルまで減少。そこでSAF波形を高さがAs、底辺をT、面積をIsとする台形で近似できると仮定し、コサイン窓関数を用いて各波形の形状をフィッティングした。そして、求めた台形プロファイルの高さαと立ち上がりの傾き(γ = α/τ1)、AsやIs、p、Tといった地震波形を特徴づけるパラメータを比較した。結果として、pはAs、Isとべき乗の関係をもち、γが小さいほどTおよびτ2は長くなる傾向にあった。しかしながら、TとAs、Isの間には明瞭な相関は見られなかった。
Mori and Kumagai (2019)では、qとAsの比例関係が理論的に導出されている。このモデルでは、qはクラック状または円筒状の火道の断面積(σ)とマグマの上昇速度(v)の積として表される。このとき、上記で示したSAF波形の特徴は次のように解釈できる。噴火開始とともにσおよびvが増加することにより、qおよびAsが増大する。その後火道の状態が安定し、qとAsがピーク付近で保たれる状態が一定期間続くが、噴火終盤で火道の状態が不安定化し、qおよびAsが減少する。さらにγとTの関係を考慮すると、σおよびvがピークに達するまでに要する時間、つまりτ1が長いほどTも長くなると解釈できる。よってサブプリニー式噴火のような長時間継続する爆発的な噴火では、噴火規模や継続時間は、火道の最大開口量や最大のマグマ上昇速度、そしてこれらの値がピークに至るまでの増加率によって制約されている可能性がある。
本研究の結果は、高周波帯におけるエンベロープ地震波形の形状が、噴火規模、継続時間の推定や噴出活動の推移を予測する上で有用であることを示している。推定したγ とT の関係を用いて各SAF波形のγの値から対応するTを計算したところ、ばらつきはあるものの実際の微動波形のTを比較的再現することができた。したがって、噴火微動の波形形状が台形で近似できるとき、その立ち上がりの期間の傾きからおおよその微動の継続時間を推定できるかもしれない。火山ごとの傾向の違いを議論するためにも、今後他の火山についても同様の手法を用いて微動波形の形状特徴を調べていく必要がある。