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[SVC32-P03] 伊豆大島1986年噴火Bスコリアの石基組織から探る苦鉄質サブプリニー式噴火の火道浅部過程
キーワード:苦鉄質マグマ、サブプリニー式噴火、マイクロライト、火道浅部過程、伊豆大島火山
伊豆大島1986年噴火は,同火山で発生した最新のVEI-3噴火である.この噴火では,新たに開口したB火口で,無斑晶質の玄武岩質安山岩マグマによるサブプリニー式噴火が発生した.本研究では,この噴火の噴出物であるスコリア(Bスコリア)について,偏光顕微鏡観察,石基組織解析,石基鉱物・石基ガラスの化学組成分析を行い,その火道浅部プロセスおよび,それが噴火ダイナミクスに及ぼす影響について検討した.B噴火のガラス質スコリアの石基は,斜長石と単斜輝石のマイクロライトとガラスから主に構成され,総結晶量が ~11-50 vol% の範囲で変動を示した.さらに,斜長石と単斜輝石の結晶量は,その結晶数密度とそれぞれ正の相関を示した.これらの結晶には定向配列はみられなかった.石基ガラスは,SiO2量が ~54.8-58.3 wt% の玄武岩質安山岩組成であった.結晶量の増加に伴ってSiO2,TiO2,FeO*量はやや増加し,Al2O3,MgO,CaO量はやや減少した.1986年B噴火の噴火温度を1100℃と仮定した場合,石基メルトの含水量と粘性率はそれぞれ,~1.0-1.9 wt%,~100.3-105.7 Pa・sと見積もられた.さらに,マイクロライトの影響を考慮したマグマの粘性率は ~102.2-108.3 Pa・s と見積もられた.メルト含水量と結晶量には,結晶量<25vol%とそれ以上の試料で異なる相関を示し,いずれでも負の相関がみられた.B噴火のマグマ減圧速度は ~10-1.6-10-0.1 MPa s-1 であることが見積もられ,メルト含水量とは正の相関を示した.減圧速度と結晶量の間でも,結晶量<25vol%とそれ以上の試料で異なる相関が見られ,いずれについても結晶量の増加に伴って減圧速度が減少した.
スコリアの総結晶量は,マグマの粘性-脆性遷移が起こると考えられる結晶量を跨いでいた.また,斜長石を含むマグマの粘性率は,結晶量が~30vol%で,106 Pa・sと見積もられた.このことから,結晶量の多いスコリアと少ないスコリアで破砕メカニズムが異なり、結晶量の少ないマグマは慣性破砕することで液体のまま噴出し,結晶量の多いマグマは脆性破砕をすることで固体として噴出したと考えられる.このことは,高結晶量のスコリア中の気泡は歪であるのに対し,低結晶量のスコリア中の気泡は丸いという観察結果からも支持される.1986年B噴火で観測された溶岩噴泉と二次溶岩は液体のまま噴出したマグマによって形成されたのに対し,噴煙柱は固体的に噴出したマグマが形成に寄与した可能性がある.石基ガラスの含水量,減圧速度と結晶量の関係から,結晶量~25vol%を境に破砕メカニズムが変化した可能性がある.また,この関係から,マグマの上昇に伴い結晶量が増加しマグマの上昇速度が遅くなると,より浅部でマグマの破砕が発生したと考えられる.
スコリアの総結晶量は,マグマの粘性-脆性遷移が起こると考えられる結晶量を跨いでいた.また,斜長石を含むマグマの粘性率は,結晶量が~30vol%で,106 Pa・sと見積もられた.このことから,結晶量の多いスコリアと少ないスコリアで破砕メカニズムが異なり、結晶量の少ないマグマは慣性破砕することで液体のまま噴出し,結晶量の多いマグマは脆性破砕をすることで固体として噴出したと考えられる.このことは,高結晶量のスコリア中の気泡は歪であるのに対し,低結晶量のスコリア中の気泡は丸いという観察結果からも支持される.1986年B噴火で観測された溶岩噴泉と二次溶岩は液体のまま噴出したマグマによって形成されたのに対し,噴煙柱は固体的に噴出したマグマが形成に寄与した可能性がある.石基ガラスの含水量,減圧速度と結晶量の関係から,結晶量~25vol%を境に破砕メカニズムが変化した可能性がある.また,この関係から,マグマの上昇に伴い結晶量が増加しマグマの上昇速度が遅くなると,より浅部でマグマの破砕が発生したと考えられる.