日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC32] 火山噴火のダイナミクスと素過程

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (22) (Ch.22)

コンビーナ:大橋 正俊(東京大学地震研究所)、コンビーナ:並木 敦子(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻)、鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)、コンビーナ:新谷 直己(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、座長:大橋 正俊(九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)

11:00 〜 13:00

[SVC32-P05] 御鉢火山1235年噴火堆積物物性の定量化による玄武岩質爆発的噴火の理解

*正畑 沙耶香1前野 深2安田 敦2外西 奈津美2 (1.東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻、2.東京大学地震研究所)

キーワード:玄武岩質火山、粒子形状、破砕

玄武岩質火山は、溢流的噴火に限らず、爆発的噴火を起こす場合や火砕流を発生する場合など多様な噴火様式がある。このような噴火様式変化のメカニズムや原因を明らかにすることは重要である。過去の噴火について、堆積物にもとづいて噴火推移を再構築し、その粒子物性・岩石組織の特徴からマグマの上昇過程を制約することができる可能性がある。本研究では、玄武岩質火山の大規模爆発的噴火の事例として御鉢火山1235年噴火を対象とし、噴出物の記載、分布域の計測、粒子物性解析を通して噴火推移を考察した。
 1235年噴火堆積物(高原テフラ、ThT)はThT-a、b、cの3つのユニットとして識別され、それぞれ異なる爆発的噴火によって形成された。ThT-bとThT-cとの間でSiO2含有量が増加する。本研究では、堆積物を7つのサブユニットからなるThTテフラと火砕流堆積物(Ohsf)に細分した。ThT-aは黒色フレーク状スコリア、ThT-bは黒〜赤褐色ブロック状スコリア、そしてThT-cは黒色ややフレーク状スコリアで構成される。Ohsfは黒色のスコリアからなる。テフラ分布域をもとに火砕物の総噴出量を推定したところ、0.32 km3となり、従来の推定よりも大規模な噴火であったことがわかった。各サブユニットのラピリサイズ(-3.0〜-4.0φ)のスコリア粒子に対して、偏光・電子顕微鏡による観察、投影画像を用いた粒子形状指数解析、空隙構造の解析、みかけ密度の測定および連結空隙と独立気泡割合の測定・算出を行った。その結果、形状指数の値はそれぞれThT-aからThT-bにかけて増加しThT-bからThT-cにかけてやや減少する変化を示した。ThT-a、bは0.25mm以上1mm以下のサイズの気泡(中サイズ気泡)がユニット内で増加したが、ThT-cでは逆の傾向が見られた。より大きいサイズの気泡が全体の気泡の中で占める割合は、ThT-aで大きく、ThT-c、bの順で続いた。また、連結空隙割合は各ユニット内で5%前後減少する。マイクロライト量は定性的な違いが見られ、ThT-bおよびThT-c上部で多く存在した。
 形状指数の値は肉眼で観察した粒子形状の特徴を良く表しており、その変化には空隙構造の違いが反映されていることを明らかにした。気泡量や独立気泡の割合が噴火の規模・強度と相関していることもわかった。これらの粒子形状や岩石組織とその変化から噴火の強度とその推移について考察した。粒子形状が不規則なThT-aを形成した噴火は比較的小規模で強度が低く、噴火後半で爆発性が上がるイベントであり、ThT-b噴火はThT-aに比べて大規模・強度の高い噴火であった。ThT-cは後半ほど爆発性が下がるイベントであり、前2つの噴火とはやや異なる経路をたどったと考えられる。