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[SVC33-07] イオンクロマトグラフィーを用いた火口湖の硫酸イオン定量値の確からしさ
キーワード:火山性熱水、イオンクロマトグラフィー、硫黄化学種、火口湖
群馬県に位置する草津白根山には湯釜という活動的火口湖がある。多くの研究者たちは、湯釜の化学組成を通して火山活動を評価することに注目している。
湯釜のような活動的火口湖の化学的組成の観測を通し、SO42-/Cl-比などを指標として火山活動を評価することができる[1]。火山性熱水のSO42-/Cl-比は、火山活動の状態を反映する[2,3]。故に、火山性流体のSO42-/Cl-比は化学的火山観測の重要な指標である。正しいSO42-/Cl-比を得るためにはSO42-とCl-それぞれに高確度な分析法が求められる。
イオンクロマトグラフィー(IC)は、陰イオンの定量分析に広く使われている手法である。しかし、ICの分析確度は分析対象の試料の化学的,物理的特徴によって大きく損なわれる可能性がある。そこで本研究では、火山熱水試料における陰イオン、特に硫酸イオンのICによる分析の難しさについて議論する。我々の研究室では、湯釜サンプルのIC分析が異常な定量結果を与えることがあることに気付いた。SO42-のIC分析において測定時に用いる試料の希釈倍率が大きいほど、SO42-の濃度が上昇する現象である。一方で、Cl-のIC分析には異常がないことを確認している。
湯釜の湖水試料はいくつの特徴がある。まずは、pHが1付近の強酸性である。次に、溶存成分濃度がきわめて高く、Cl-, SO42-濃度が1000 mg/L以上、Al, Ca, Feの濃度が100 mg/L以上である。また、SO42-以外、ポリチオン酸イオン(SnO62-)も溶存硫黄化学種として湯釜湖水中に存在する[4]。
そこで湯釜水試料の特徴を踏まえ、SO42-のIC測定結果に影響を与える要因を探るため、湯釜の水試料を模したCl-, SO42-を含む溶液を調製し,IC定量値の確からしさを確認する実験を試みた。用いたIC装置はMetrohm 883 Basic IC plus(カラム:Metrosep A Supp 4-250/4.0,電気伝導度検出器)である。溶離液1.8 mM Na2CO3-1.7 mM NaHCO3を用いている。
実験の結果からは、試料中の高濃度Al3+濃度と低いpH値はSO42-のIC測定結果に無視できない影響を与える可能性が示唆された。ICを高塩度の火口湖水や火山性熱水に適用する際には、事前に分析値の確度を適切に検証する必要がある。 Y. Taran, E. Kalacheva, Acid sulfate-chloride volcanic waters; Formation and potential for monitoring of volcanic activity, Journal of Volcanology and Geothermal Research, Volume 405, 107036, ISSN 0377-0273, 2020. Takafumi Furukawa, Akira Ueda. Tamagawa hyper-acidic hot spring and phreatic eruptions at Mt. Akita-Yakeyama: Part 1. The isotopic and chemical characteristics of the hot spring water. Journal of Volcanology and Geothermal Research, Volume 412, 2021. Akira Ueda, Toshiaki Tanaka, Minoru Kusakabe, Takafumi Furukawa. Tamagawa hyper-acidic hot spring and phreatic eruptions at Mt. Akita-Yakeyama Volcano: Part 2. Secular variations of SO4/Cl ratios and their relationship to the phreatic eruptions. Journal of Volcanology and Geothermal Research, Volume 414, 2021. Bokuichiro Takano. Correlation of Volcanic Activity with Sulfur Oxyanion Speciation in a Crater Lake. Science, Vol.235, 4796, p1633-1635, 1987.
湯釜のような活動的火口湖の化学的組成の観測を通し、SO42-/Cl-比などを指標として火山活動を評価することができる[1]。火山性熱水のSO42-/Cl-比は、火山活動の状態を反映する[2,3]。故に、火山性流体のSO42-/Cl-比は化学的火山観測の重要な指標である。正しいSO42-/Cl-比を得るためにはSO42-とCl-それぞれに高確度な分析法が求められる。
イオンクロマトグラフィー(IC)は、陰イオンの定量分析に広く使われている手法である。しかし、ICの分析確度は分析対象の試料の化学的,物理的特徴によって大きく損なわれる可能性がある。そこで本研究では、火山熱水試料における陰イオン、特に硫酸イオンのICによる分析の難しさについて議論する。我々の研究室では、湯釜サンプルのIC分析が異常な定量結果を与えることがあることに気付いた。SO42-のIC分析において測定時に用いる試料の希釈倍率が大きいほど、SO42-の濃度が上昇する現象である。一方で、Cl-のIC分析には異常がないことを確認している。
湯釜の湖水試料はいくつの特徴がある。まずは、pHが1付近の強酸性である。次に、溶存成分濃度がきわめて高く、Cl-, SO42-濃度が1000 mg/L以上、Al, Ca, Feの濃度が100 mg/L以上である。また、SO42-以外、ポリチオン酸イオン(SnO62-)も溶存硫黄化学種として湯釜湖水中に存在する[4]。
そこで湯釜水試料の特徴を踏まえ、SO42-のIC測定結果に影響を与える要因を探るため、湯釜の水試料を模したCl-, SO42-を含む溶液を調製し,IC定量値の確からしさを確認する実験を試みた。用いたIC装置はMetrohm 883 Basic IC plus(カラム:Metrosep A Supp 4-250/4.0,電気伝導度検出器)である。溶離液1.8 mM Na2CO3-1.7 mM NaHCO3を用いている。
実験の結果からは、試料中の高濃度Al3+濃度と低いpH値はSO42-のIC測定結果に無視できない影響を与える可能性が示唆された。ICを高塩度の火口湖水や火山性熱水に適用する際には、事前に分析値の確度を適切に検証する必要がある。 Y. Taran, E. Kalacheva, Acid sulfate-chloride volcanic waters; Formation and potential for monitoring of volcanic activity, Journal of Volcanology and Geothermal Research, Volume 405, 107036, ISSN 0377-0273, 2020. Takafumi Furukawa, Akira Ueda. Tamagawa hyper-acidic hot spring and phreatic eruptions at Mt. Akita-Yakeyama: Part 1. The isotopic and chemical characteristics of the hot spring water. Journal of Volcanology and Geothermal Research, Volume 412, 2021. Akira Ueda, Toshiaki Tanaka, Minoru Kusakabe, Takafumi Furukawa. Tamagawa hyper-acidic hot spring and phreatic eruptions at Mt. Akita-Yakeyama Volcano: Part 2. Secular variations of SO4/Cl ratios and their relationship to the phreatic eruptions. Journal of Volcanology and Geothermal Research, Volume 414, 2021. Bokuichiro Takano. Correlation of Volcanic Activity with Sulfur Oxyanion Speciation in a Crater Lake. Science, Vol.235, 4796, p1633-1635, 1987.