日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC33] 火山の熱水系

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (24) (Ch.24)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、コンビーナ:神田 径(東京工業大学理学院火山流体研究センター)、大場 武(東海大学理学部化学科)、座長:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)

11:00 〜 13:00

[SVC33-P01] 現場作業に適した温泉・湧水中の溶存硫化水素簡易定量法

*木川田 喜一1、関 海洲1 (1.上智大学理工学部)

キーワード:硫化水素、温泉、地熱流体

火山性の温泉のなかには,比較的高濃度に硫化水素が溶存しているものがある.硫化水素は火山熱水系からの気体成分として供給されるため,源泉や湧水の硫化水素濃度の濃度やその変動は,温泉地域の地下熱水構造の理解や,関係する火山の活動レベルの評価に繋がる場合がある.
温泉水の溶存硫化水素の公定分析法としては,我が国では鉱泉分析法指針に記されているものとして,硫化水素をカドミウムの硫化物塩として固定した後に,ヨージメトリーで求める方法がある.しかしながら,この方法は試料水採取時にホールピペットやメスフラスコなどの体積計を必要とし,また,生じた硫化物塩を常に定量的に取り扱う必要があるため,山間地などでのフィールドワークの際に行う作業としては不適である.そこで本研究では,体積計を必要としない現場作業に適した温泉水中の溶存硫化水素分析手法を考案し,十分な実用性が確認できたので報告する.
今回考案した方法では,現地において,温泉水を濃度既知の酢酸カドミウムおよび内標準として塩化リチウムを含む反応溶液の入った容器に注入する.このとき,温泉水中の硫化水素はカドミウムイオンと反応し,硫化カドミウムの沈澱を生成する.この生じた沈澱を含む反応後溶液を容器ごと実験室に持ち帰り,沈澱をろ過後した後,ろ液のカドミウムイオン濃度およびリチウムイオン濃度をICP発光分析法およびフレーム発光分析により定量する.分析対象の温泉水に含まれるリチウムイオン濃度を無視できるとすれば,試料採取時の温泉水と反応溶液との混合量比はろ液のリチウムイオン濃度から知ることができる.ろ液のカドミウムイオン濃度と反応用溶液の初期カドミウムイオン濃度との差から生成した硫化カドミウム量を求め,混合量比をもとに温泉水中の硫化水素濃度を算出する.これら一連の操作において体積計は必要としない.また,採取容器および反応容器の何れも,軽量で携帯性および耐衝撃強度に優れる樹脂製のディスポシリンジを用いることが可能であることから,山間地などでの現場作業に適するものとなっている.