日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC33] 火山の熱水系

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (24) (Ch.24)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、コンビーナ:神田 径(東京工業大学理学院火山流体研究センター)、大場 武(東海大学理学部化学科)、座長:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)

11:00 〜 13:00

[SVC33-P05] 神奈川県西部の箱根湯本地区における温泉水の炭素同位体比

*外山 浩太郎1鈴木 秀和2、代田 寧4高橋 浩3菊川 城司1 (1.神奈川県温泉地学研究所、2.駒澤大学、3.産業技術総合研究所、4.神奈川県環境科学センター)

キーワード:炭素同位体比、箱根湯本地区、温泉水

Oki and Hirano (1970)は、箱根火山周辺の温泉水を、その化学組成や地質構造などを基に、中央火口丘とその周辺から湧出するものと、基盤岩類(早川凝灰角礫岩、湯ヶ島層群)中の割れ目系から湧出するものとに分けた。本研究地域である箱根湯本地区は後者に該当する。この地区の温泉水の成因について、菊川・板寺(2008)は、温泉水の化学組成と安定同位体比を基に4つのグループに分類し、それらの成因を4つの端成分の混合と表層地下水による希釈によって説明している。しかしながら、より詳細な成因解明には、端成分の起源や混合率など更なる議論が必要である。本研究では、箱根湯本地区の温泉水の主成分の1つである炭酸水素イオンの炭素の起源を調査するために、それらの炭素同位体比の時間的・空間的分布を報告する。
2009年から2012年にかけて温泉水を60試料採取した。温泉水中の溶存無機炭素(DIC)のδ13CDICは、産業総合技術研究所に設置された自動炭酸反応装置(GasBench II, Thermo Fisher Scientific)を備えた連続フロー同位体比質量分析計(Delta V Advantage)により測定された。
得られたδ13CDIC値は、-18‰~-1‰の範囲である。2009年から2012年にかけて、δ13CDIC値の大きな変化は見られなかった。δ13CDIC値は掘削深度が深いほど、泉温が高いほど高くなる傾向を示す。いくつかの火山地帯における温泉水中の炭素は、地下深部からもたらされる火山ガス由来のCO2と土壌CO2の混合であると解釈されている(Chiodini et al., 2000; Ohsawa et al. 2002)。Sakamoto et al. (1992)は、ヘリウム同位体比結果から地下深部由来の火山ガスが箱根湯本地区の温泉水にも影響を与えていると解釈している。本研究地域のδ13C DIC値は、中央火口丘の自然噴気の値(大涌谷の噴気で約-1.0‰:大場ほか2007)と当該地域付近の表層地下水の値(約-18‰:鈴木ほか、2011)の範囲に入る。以上のことから、この地域の温泉水の炭素の起源として、汲み上げ深度が浅い温泉水は、表層地下水中に含まれる有機物由来のCO2が大きく寄与する一方、深い温泉水では火山ガス由来のCO2が大きく寄与することが明らかになった。