日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC34] 火山の監視と活動評価

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (17) (Ch.17)

コンビーナ:高木 朗充(気象庁気象研究所)、コンビーナ:宗包 浩志(国土地理院)、大湊 隆雄(東京大学地震研究所、SVC34_29PO1)

11:00 〜 13:00

[SVC34-P02] 気象庁における航空路火山灰情報業務の紹介と求められる技術

*川口 和哉1、林 勇太1、丸本 大介1、土山 博昭1、山名 泰隆1、菅野 洋1 (1.気象庁)

キーワード:火山灰、リモートセンシング、拡散予測モデル、航空路火山灰情報

航行中の航空機にとって、火山灰との遭遇は非常に危険である。ジェットエンジンが火山灰を吸い込むことにより、燃焼室の高温で融け、下流の高圧タービン室で冷却されてタービン・ブレードに付着することの影響等により、エンジン停止に陥ることがある。また、火山灰によって「すりガラス」状となった風防ガラスによる視界の妨げ、気流速度計の誤作動等の影響を及ぼすこともある。このため、航空機は火山灰を回避しなければならない。国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization:ICAO)は世界気象機関(World Meteorological Organization:WMO)等の協力の下、「国際航空路火山監視」の枠組みを構築し、世界9か所の「航空路火山灰情報センター(Volcanic Ash Advisory Center:VAAC)」を指名した。気象庁もその1つであるVAAC Tokyoとして、平成9(1997)年から業務を開始し、北西太平洋、東アジアおよび北極圏の一部を担当領域として、24時間常時、大気中を浮遊する火山灰を監視し、「航空路火山灰情報(Volcanic Ash Advisory:VAA)」を発表している。
現在のVAAは火山灰の存在領域を18時間先まで決定論的に予想し、これを囲む多角形の情報として提供している。ところが、平成22(2010)年のアイスランド・エイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火に伴う欧州航空交通の大混乱を契機に、運航の効率性向上に資する定量的火山灰情報の提供が求められるようになった。今後、エンジンへの影響の大小により火山灰濃度のレベルを設け、3次元的な各ポイントが、それぞれのレベルとなる確率を示す情報として提供することが、令和3(2021)年6月に開催されたICAO気象パネル第5回会合において合意されている。しかし、予測の初期状態である火山灰雲の内部構造の把握が非常に困難である等、技術的に乗り越えるべき課題は多い。
本講演では、VAAC Tokyoの業務及び用いている技術について紹介するとともに、国際的要求について触れ、これを実現するために発展が求められる観測、予測技術について考えたい。