11:00 〜 13:00
[SVC34-P08] 畳み込みニューラルネットワークを利用した火山性地震の分類
キーワード:火山性地震、機械学習、畳み込みニューラルネットワーク
活火山の周辺では,マグマや熱水の活動等に起因する多様な火山性地震が観測される.火山性地震は,P波・S波,卓越周波数,継続時間等の特徴をもとに複数のタイプに分けられるが,火山活動の推移とともに卓越するタイプやそれぞれの活動度に変化が現れることが多いため (e.g., McNutt, 1986),一貫した基準に基づく火山性地震の分類手法の構築は火山活動推移の把握や噴火切迫度評価の上で重要である.しかしながら,自動的な火山性地震の分類手法はあまり検討されておらず,目視で行われる場合が多い.Nakano et al. (2019) は,卓越周波数と継続時間の情報をもつランニングスペクトルと畳み込みニューラルネットワーク (CNN) を用いることで,紀伊半島沖で発生する地震,微動,ノイズを系統的に分類できることを示した.そこで,本研究では,三宅島と蔵王山の浅部火山性地震にCNNを適用し,火山性地震の分類への有用性を評価し,火山活動推移を検討した結果を報告する.
三宅島は,1940年以降約20年間隔で噴火を起こしており,2000 年噴火以降の火山活動推移を精査することは噴火の切迫性を評価するうえで重要である.そのため,次世代火山研究推進事業の一環として,山頂火口を囲む5台の広帯域地震計と1台の短周期地震計からなる機動地震観測網が2018年に展開された.この機動観測の結果,火山性地震の初動付近の波形の特徴を用いたタイプ分類が容易になり,Morita and Ohminato (2020, JpGU) では,2018年12月から2019年9月に観測された火山性地震の分類と震源決定を行い,各タイプの発生領域の棲み分けと比抵抗構造との関係を明らかにした.そこで本研究では,機動観測データを「教師」とした機械学習による火山性地震の分類を行うことで,2018年以前の三宅島の地震活動を詳細に把握することを目指した.
本研究では,Morita and Ohminato (2020, JpGU) により分類されたA型地震241個,BH型地震218個,BL型地震487個を「教師」とし,気象庁V.MJONと防災科研N. MKAVの2点の定常観測点における観測記録を用いて,観測点ごとにCNNの学習モデルを作成した.CNNは2層の畳み込み層,プーリング層,全結合層で構成され,最後はsoftmax関数を用いて各タイプの確率が出力される.最終的な分類は,2観測点で出力された確率の積を用いて評価する.CNNの入力には,3成分のランニングスペクトル画像を用い,画像の範囲は時間方向はV.MJONでのP波初動の1秒前から4.12秒後までの5.12秒,周波数方向は0-25 Hzとし,初動付近の卓越周波数とエネルギー継続時間の特徴量を利用する.
教師データをもとに作成された学習モデルを,2013年1月から2016年8月までの2160個の火山性地震に適用し,最も高い確率を示すタイプに分類した結果,A型地震(523個),BH型地震(126個),BL型地震(1481個)となった.A型地震にはP・S波が明瞭で,10 Hz以上が卓越し,震動継続時間が2秒程度のものが分類され,P・S波が不明瞭なBH型地震(126個)とBL型地震(1481個)は,初動から2秒以内の高周波成分(5-15 Hz程度)の含み具合によって分類される傾向が明らかになった.
分類の精度や一貫性を検証するために,2013年1月から2015年6月までのデータを教師としてCNNの学習モデルを作成し,2015年7月から2016年8月までのデータにモデルを適用して適合率と再現率,F1-scoreを導出した.本研究の分類結果 (CNN分類) と気象庁カタログ (JMA分類) を用意し,それぞれの場合で3タイプの適合率と再現率,F1-scoreの3値の平均値を求めた結果,CNN分類で0.808,0.828,0.817,JMA分類で0.649,0.646,0.640となった.このことは,CNNにより長期的な地震活動をより高精度でかつ一貫した分類に基づいて評価できることを示唆する.
また,BL型地震の波形の特徴と活動推移に着目すると,初動付近に高周波成分をより多く含むものが2016年の4-5月頃から増加していることが明らかになった.この時期は,火山ガス放出の急減やマグマ溜まりの増圧が観測されており,火山性地震の特徴や活動推移が火山体内部の状態変化を反映していることが示唆される.
今後,より長期的な活動について,一貫性のある基準による系統的なタイプ分類・各タイプの活動推移の検討を進めていくことで,火山活動推移の詳細が明らかになることが期待される.
謝辞:気象庁・防災科研・東京都・東大地震研のデータを使用させていただきました.本研究は文部科学省・次世代火山研究推進事業の一環として実施しました.
三宅島は,1940年以降約20年間隔で噴火を起こしており,2000 年噴火以降の火山活動推移を精査することは噴火の切迫性を評価するうえで重要である.そのため,次世代火山研究推進事業の一環として,山頂火口を囲む5台の広帯域地震計と1台の短周期地震計からなる機動地震観測網が2018年に展開された.この機動観測の結果,火山性地震の初動付近の波形の特徴を用いたタイプ分類が容易になり,Morita and Ohminato (2020, JpGU) では,2018年12月から2019年9月に観測された火山性地震の分類と震源決定を行い,各タイプの発生領域の棲み分けと比抵抗構造との関係を明らかにした.そこで本研究では,機動観測データを「教師」とした機械学習による火山性地震の分類を行うことで,2018年以前の三宅島の地震活動を詳細に把握することを目指した.
本研究では,Morita and Ohminato (2020, JpGU) により分類されたA型地震241個,BH型地震218個,BL型地震487個を「教師」とし,気象庁V.MJONと防災科研N. MKAVの2点の定常観測点における観測記録を用いて,観測点ごとにCNNの学習モデルを作成した.CNNは2層の畳み込み層,プーリング層,全結合層で構成され,最後はsoftmax関数を用いて各タイプの確率が出力される.最終的な分類は,2観測点で出力された確率の積を用いて評価する.CNNの入力には,3成分のランニングスペクトル画像を用い,画像の範囲は時間方向はV.MJONでのP波初動の1秒前から4.12秒後までの5.12秒,周波数方向は0-25 Hzとし,初動付近の卓越周波数とエネルギー継続時間の特徴量を利用する.
教師データをもとに作成された学習モデルを,2013年1月から2016年8月までの2160個の火山性地震に適用し,最も高い確率を示すタイプに分類した結果,A型地震(523個),BH型地震(126個),BL型地震(1481個)となった.A型地震にはP・S波が明瞭で,10 Hz以上が卓越し,震動継続時間が2秒程度のものが分類され,P・S波が不明瞭なBH型地震(126個)とBL型地震(1481個)は,初動から2秒以内の高周波成分(5-15 Hz程度)の含み具合によって分類される傾向が明らかになった.
分類の精度や一貫性を検証するために,2013年1月から2015年6月までのデータを教師としてCNNの学習モデルを作成し,2015年7月から2016年8月までのデータにモデルを適用して適合率と再現率,F1-scoreを導出した.本研究の分類結果 (CNN分類) と気象庁カタログ (JMA分類) を用意し,それぞれの場合で3タイプの適合率と再現率,F1-scoreの3値の平均値を求めた結果,CNN分類で0.808,0.828,0.817,JMA分類で0.649,0.646,0.640となった.このことは,CNNにより長期的な地震活動をより高精度でかつ一貫した分類に基づいて評価できることを示唆する.
また,BL型地震の波形の特徴と活動推移に着目すると,初動付近に高周波成分をより多く含むものが2016年の4-5月頃から増加していることが明らかになった.この時期は,火山ガス放出の急減やマグマ溜まりの増圧が観測されており,火山性地震の特徴や活動推移が火山体内部の状態変化を反映していることが示唆される.
今後,より長期的な活動について,一貫性のある基準による系統的なタイプ分類・各タイプの活動推移の検討を進めていくことで,火山活動推移の詳細が明らかになることが期待される.
謝辞:気象庁・防災科研・東京都・東大地震研のデータを使用させていただきました.本研究は文部科学省・次世代火山研究推進事業の一環として実施しました.