日本地球惑星科学連合2022年大会

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[E] ポスター発表

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[U-02] 地球規模環境変化の予測と検出

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (1) (Ch.01)

コンビーナ:河宮 未知生(海洋研究開発機構)、コンビーナ:立入 郁(海洋研究開発機構)、建部 洋晶(海洋研究開発機構)、コンビーナ:Ramaswamy V(NOAA GFDL)、座長:河宮 未知生(海洋研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[U02-P05] 陸域統合モデル MIROC-INTEG-LAND による将来シナリオ評価

*横畠 徳太1、木下 継基2、櫻井 玄3、藤森 真一郎4、Pokhrel Yadu5伊藤 昭彦1佐藤 雄亮1加藤 悦史6、岡田 将誌1立入 郁7、松本 健一8江守 正多1高橋 潔1 (1.国立環境研究所、2.茨城大学、3.農研機構、4.京都大学、5.ミシガン州立大学、6.エネルギー総研、7.海洋研究開発機構、8.東洋大学)

キーワード:気候変動、地球システムモデル、将来予測

1. はじめに
将来の地球システムと人間社会の変化を定量的に予測するためには、気候変動対策を含めた様々な人間活動の変化と、地球システムの変化との間の相互作用を、定量的に評価することが重要である。例えば、土地利用改変を伴う緩和・適応策の実施は、地表の植生分布を変えることを通して、二酸化炭素の吸収と排出量に影響を及ぼす。また再生可能エネルギーとしてバイオ燃料作物を栽培することは重要な緩和策の一つであるが、炭素や窒素などの物質循環に影響を与えるだけでなく、それによって灌漑が強化されれば、地球システムにおける水循環にも大きな影響を及ぼす。この一方で、地球システムの変化が、人間活動にも影響を与える。例えば将来の気候変化は、人間が利用できる水資源や作物の生産に影響を及ぼし、これによって人間による土地利用が変わる可能性がある。このため、地球システムと人間活動の相互作用をモデルに組み込み、地球—人間システムにおける様々なフィードバックを定量的に評価し、将来予測を行う必要がある。本発表では、これまでにわたしたちの研究チームが開発してきた陸域/地球システム統合モデルによる研究の成果を報告する。

2. 陸域/地球システム統合モデル
これまでに私たちは、気候モデル(MIROC)における陸面過程モデル(MATSIRO)に、陸域生態系モデル(VISIT)、貯水池やダム操作および灌漑を記述する水資源モデル(H08)、作物の収量を計算する作物モデル(PRYSBI2)、人間による耕作地利用面積を予報する土地利用モデル(TeLMO)を結合させた「陸域統合モデル MIROC-INTEG-LAND」の開発を行った(Yokohata et al. 2020a)。さらに現在では、陸域統合モデルに大気・海洋過程を結合させた「地球システム統合モデル MIROC-INTEG-ES」の開発を行なっている。地球システム統合モデルでは、最新の地球システムモデル MIROC-ES2L がベースとなっている。

3. 結果と議論
陸域統合モデルを利用し、さまざまな将来の社会経済・気候シナリオ(SSP/RCP)のもとで実験を行い、分析を行ったところ、次のような地球―人間システムフィードバックが明らかになった。将来の人口の増加による食糧需要の増加、気候変動緩和策のためのバイオ燃料需要の増加によって、農地面積が拡大する。大きな気候変動が生じるシナリオでは、作物収量が低下することで、より多くの農地が必要になり、農地面積をさらに拡大させる。農地面積の拡大は、灌漑のための水需要を増加させるとともに、土地利用変化に伴う温室効果ガス排出を増加させ、さらに気候変動を促進する。発表では、MIROC-INTEG-LAND を活用したさまざまな研究(永久凍土融解による温室効果ガス放出の将来予測; Yokohata et al. 2020bなど)や、地球システム統合モデルを活用した研究についても紹介する。

参考文献
[1] Yokohata, T., et al., 2020a, Geosci. Model Dev., 13, 4713–4747, https://doi.org/10.5194/gmd-13-4713-2020
[2] Yokohata T., et al. 2020b, Prog. Earth Planet. Sci., 7, 56. https://doi.org/10.1186/s40645-020-00366-8