日本地球惑星科学連合2022年大会

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[U-06] 日本の学術出版とオープンサイエンス、オープンデータ

2022年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、コンビーナ:川幡 穂高(東京大学 大気海洋研究所)、座長:小田 啓邦(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、川幡 穂高(東京大学 大気海洋研究所)

10:00 〜 10:30

[U06-04] COVID-19が変える学術情報流通と日本の現状

★招待講演

*林 和弘1 (1.文部科学省科学技術・学術政策研究所)

キーワード:オープンサイエンス、オープンアクセス、プレプリント、査読、日本語出版

本発表ではオープンサイエンス政策や学術出版の最近の潮流、ならびにCOVID-19が与えた影響を踏まえて、以下のトピックについて報告する。

1. プレプリントと査読の意義
COVID-19でにわかに注目を集めたプレプリントは、2020年に報告した研究動向の把握の仕方に新しい手法を提供しただけでなく、情報系の分野ではプレプリントだけで成立する情報流通サイクルの存在を示唆する結果も得られた。プレプリントは単なる原著論文の草稿という位置づけを超えた価値を持つオンラインメディアになろうとしている。また、原著論文およびその査読の価値の重要性が再認識されつつ、より早く透明性の高い査読のあり方が求められている。

2. COVID-19が顕在化させた研究データ共有・公開の有用性と課題
COVID-19は、研究データの利活用も促進し、迅速な国際協働も生まれた。
一方、COVID-19以前より、研究データ共有・公開のインセンティブが限定的である。現在は論文のエビデンスデータとしてのデータ提出が義務化の主な動きとなっている。それに加えて研究プロセスの途中で得られた研究データを共有・公開できる管理基盤は整いつつあるが、実際にデータの共有・公開を促すインセンティブ設計がまだである。

3. 日本語学術ジャーナル出版の取り組みにみる多様性
いくつかの日本の学会では、いわゆる大学ランキングに影響を与えるような、被引用数を意識した原著論文を集めたものとは違う日本語の学術ジャーナルが存在し、日本語による研究成果公開の意義だけでなく、研究成果メディアの意義を結果的に問うている。

オープンサイエンスは、研究のデジタルトランスフォーメーションに合わせて、研究成果公開メディアの姿も変容させようとしていることを踏まえ、学会や学術ジャーナル関係者の主体的な取り組みによる変化の対応ないしは新しい挑戦が求められる。