日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[U-08] 地球惑星科学の進むべき道11:地球惑星科学分野の大型研究計画

2022年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:中村 卓司(国立極地研究所)、コンビーナ:田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、佐竹 健治(東京大学地震研究所)、コンビーナ:高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、座長:佐竹 健治(東京大学地震研究所)

14:30 〜 14:53

[U08-10] 次世代太陽風観測装置による革新的太陽圏科学の実現

*岩井 一正1徳丸 宗利1藤木 謙一1 (1.名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

キーワード:太陽風、太陽圏、コロナ質量放出、宇宙天気、惑星間空間シンチレーション、フェーズドアレイ

太陽の大気コロナは数100万度もの高温に保たれており、コロナのプラズマ大気の一部は、超音速の風「太陽風」となって宇宙空間へと流出する。太陽風の速度は300km/sから800km/s程度まで領域によって大きく変化し、太陽圏を満たしている。この太陽風を加速するメカニズムは詳しく分かっておらず、太陽物理学・宇宙空間物理学における共通の問題として活発に研究が行われている。また、太陽風の変動や突発的擾乱は地球・惑星の周辺環境や大気進化に影響を与える。太陽風の理解とその予報は情報通信を始めとして急速に宇宙に進出する社会基盤にとっても重要となっている。本提案では (1)太陽風がどうやって加速され宇宙空間へと伝搬していくのか、という太陽物理学最大の未解決問題「太陽風加速問題」を解明すること、そして(2)太陽風のリアルタイム予測による宇宙天気予報の実用化・高精度化を通じて社会に貢献すること、という2つの課題を達成することを目指す。太陽風は電離した大気の塊であり、電波を散乱する性質がある。この惑星間空間シンチレーションを地上電波観測から捉えることは、太陽風のグローバルな構造を導出できる有効な手法である。本研究では国内3箇所に327MHz帯域に感度を持つ広視野大口径なアレイアンテナを設置し、多方向に存在する電波天体を一度に観測することで、既存装置の10倍の太陽風速度データを創出する。このデータから世界で初めて太陽表面における太陽風の流源の空間分布を分解し、その加速過程を解明する。更に本装置で得られる太陽風のリアルタイムデータを太陽圏の磁気流体シミュレーションに同化することで、太陽風の擾乱現象が地球に到来する時刻を劇的に向上させる。本計画は名古屋大学宇宙地球環境研究所を中心に2020年代の実現を目指し推進され、総額は10-20億円規模になることが見込まれる。