日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-08] 地球惑星科学の進むべき道11:地球惑星科学分野の大型研究計画

2022年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:中村 卓司(国立極地研究所)、コンビーナ:田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、佐竹 健治(東京大学地震研究所)、コンビーナ:高橋 幸弘(北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻)、座長:佐竹 健治(東京大学地震研究所)

15:30 〜 15:53

[U08-12] 衛星を用いた全球地球観測システムの構築

*祖父江 真一1本多 嘉明3六川 修一2、岩崎 晃2高薮 縁2中島 映至5高橋 暢宏4 (1.宇宙航空研究開発機構、2.東京大学、3.千葉大学、4.名古屋大学、5.国立環境研究所)

キーワード:全球地球観測システム、Society 5.0

地球温暖化など地球の表層環境に関わる社会的・科学的課題の解決に向けて世界的に大きな努力が進む中、科学的研究と対策のためには、全球地球観測システムの構築が緊要である。特に、夢ロードマップにも示されているように、人工衛星による観測システムは現在から将来に向けて不可欠なツールである。宇宙基本計画の令和3年改訂版の工程表では、科学と監視の2つの機能を同時に実現する地球観測衛星が、「10 リモートセンシング衛星等の開発・整備・運用」における令和3年度から降水レーダ後継ミッションの検討(令和3年度から)、ALOS-3後継機の検討(令和4年度)、ALOS-4後継機の検討(令和5年度)、高性能マイクロ波放射計3後継機の検討(令和5年度)といった形で、検討を進めていくことになっている。
「今後の宇宙開発体制のあり方に関するタスクフォース会合・リモートセンシング分科会(TF;23学術団体+2団体参加)」の下部委員会の一つである「地球科学研究高度化ワーキンググループ(WG)」(以下TF高度化WG)では,地球観測に関わる学術コミュニティ・諸機関が一丸となって日本学術会議の提言を実現する方策を示す「地球観測グランドデザイン」を作成し、TF全体会議での議論を経て,宇宙関係府省・宇宙関係機関等に提案する枠組みを確立した。この地球観測グランドデザイン提案は、TF参加の各学会・団体等の総意として、政府へ向けた地球観測ミッション提案を行うことを目的としている。
平成30年度版地球観測グランドデザインでは、次の5つのミッションが規定の工程表に記載されているミッションに加えて、短期的に実現するミッションとして、地球規模の気候変動・水循環メカニズム解明に関するミッション、森林バイオマス推定のためのミッション、短寿命気候汚染物質の削減にむけたミッション、雲・降水過程の解明に関するミッション、地球環境変動(地球温暖化を左右する全球の放射強制力や生態系変動)の監視・解明に関するミッションを提案し、そのうちの一部はすでに開発がAMSR3, MOLIとして進められている。さらに、平成31年以降は、高分解能光学、SAR、GOSAT、静止気象衛星など工程表に記載されているミッションの継続なども含め、より広い分野からの衛星地球観測ミッション提案を試験公募し、グランドデザインに反映してきた。また、現在の第3回の試行公募では、JpGUの特別セッションでの提案を踏まえて、評価および議論を深化させていく予定である。
今後、日本学術会議、JpGUなどの学会ならびに民間との議論を踏まえつつ、グランドデザインに記載されているミッションについて時間的な優先度等に基づく、政府等に対して提案を行っていく予定である。そして、この衛星地球観測ミッションの実現により、地球規模の気候変動・水循環メカニズムの解明地球温暖化予測の精度向上、気象予報の高精度化、災害などのさまざまな社会課題の解決を目指し、経済発展と社会課題の両立というSociety 5.0の実現やUN/SDGsに寄与する。