日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-09] 気象津波の発生を伴ったトンガ海底火山噴火

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:日比谷 紀之(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、コンビーナ:前野 深(東京大学地震研究所)、コンビーナ:中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、コンビーナ:田村 芳彦(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、座長:日比谷 紀之(東京海洋大学 海洋環境科学部門)、中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

10:15 〜 10:30

[U09-06] GNSS-TECとSuperDARN北海道レーダー観測による2022年フンガトンガ・フンガハアパイ火山噴火後の電離圏擾乱の電磁気的共役性について

*新堀 淳樹1大塚 雄一1惣宇利 卓弥1西岡 未知2Perwitasari Septi2津田 卓雄3西谷 望1 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.情報通信研究機構、3.電気通信大学)

キーワード:トンガ火山噴火、伝搬性電離圏擾乱、電磁気的共役、東西方向電場、E領域ダイナモ、GNSS-TECとSuperDARNレーダー観測

2022年1月15日に発生したフンガトンガ・フンガハアパイ火山噴火後の伝搬性電離圏擾乱の電磁気的共役の特徴とその生成機構を解明するために、全球測位衛星システム(GNSS)から得られた全電子数(TEC)データとSuperDARN北海道レーダーによって観測された電離圏プラズマ速度データの解析を行った。さらに、ラムモードとして伝搬する大気圧縮波動(音波)に伴う下層大気擾乱を同定するためにひまわり8号によって観測された高空間分解能の熱的赤外データを用いた。その結果、7:30 UT後に西向きに伝搬する2つの明瞭な伝搬性電離圏擾乱が日本上空に現れ、そのTEC変動のパターンは、ちょうど磁気共役点に相当する南半球で観測された電離圏擾乱のものと類似していた。0.5-1.1 TECUに及ぶ大振幅の伝搬性電離圏擾乱に呼応して、電離圏F領域におけるプラズマ流の方向が南向きから北向きへと変化していた。この時、南半球の磁気共役点は電離圏E領域の高度において日照の領域に位置していた。SuperDARNレーダーで観測されたプラズマ流変動の振幅と周期はそれぞれ、約100–110 m/sと 約36–38分であった。これらのプラズマ流変動から東西方向の電場強度が約~2.8–3.1 mV/mと見積もることができた。さらに、伝搬性電離圏擾乱によるTEC変動とプラズマ流変動の間には約10-12分の位相差が存在していることが判明した。また、SuperDARNレーダーで観測されたプラズマ流変動を電離圏電場の外部摂動として与えた電離圏モデル計算によっても両者の変動の位相にずれが生じることが分かった。これらの結果は、火山噴火がもたらした下層大気擾乱によって駆動された電離圏E領域ダイナモ電場が電離圏F領域高度の電離圏擾乱を引き起こし、その電場が下層大気を伝搬する音波速度よりもかなり早い電磁波(アルフベン波)として磁力線に沿って北半球側に伝搬したことを意味する。上記の観測結果から、磁力線に沿って伝搬してきた電場が火山噴火によってトリガーされた大気擾乱の到達前に日本上空で現れた西向き伝搬する電離圏擾乱を引き起こしたと言える。また、今回のトンガ火山噴火に伴う伝搬性電離圏擾乱の生成機構は、通常の夜間の中緯度電離圏に現れる中規模伝搬性電離圏擾乱のものとは異なっていると結論される。