日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-09] 気象津波の発生を伴ったトンガ海底火山噴火

2022年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:日比谷 紀之(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、コンビーナ:前野 深(東京大学地震研究所)、コンビーナ:中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、コンビーナ:田村 芳彦(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、座長:田村 芳彦(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、前野 深(東京大学地震研究所)

14:15 〜 14:30

[U09-09] トンガ2022火山噴火の噴煙3次元シミュレーション

*鈴木 雄治郎1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:トンガ海底火山、火山噴火、噴煙

2022年1月15 日,フンガトンガ・フンガハアパイ火山で爆発的な噴火が発生した.噴火に伴って多量の火山噴煙が上昇し,その最高高度は50 kmを超えたという報告があり(NASA, 2022),これまで観測されたことのない高い噴煙高度であった.傘型噴煙と呼ばれる水平拡大噴煙の半径は,噴火開始80分後には約260kmまでになり,噴火開始からの経過時間が同じ時点でピナツボ火山1991年噴火の噴煙半径よりも大きかった.また,火山から8000km離れた日本においても数hPaの気圧変化が観測され,噴火に伴う空気振動が励起したと考えられる潮位変動が日本でも観測された.これらの観察事実は,噴火の強度が非常に強かったことを示唆している.本研究では,今回の噴火現象を理解するために,火山噴煙の数値シミュレーションを実行した.
数値計算には,2流体モデルであるSK-3D(Suzuki et al., 2005 JGR)を用いた.標準的な熱帯成層大気で満たされる計算領域を設定し,下面は滑り条件を与えた海水面とした.下面の中心に円形の火口を設置し,マグマ破砕物と火山ガス,海水からなる混合物を1時間噴出させた.マグマ破砕物は十分に小さく,動的・熱的に瞬間的にガス相と平衡状態になると仮定している.噴出速度は噴出物の音速とした.
予備的な計算の結果,火口でマグマ物質と混合する海水量によって噴煙の挙動やその高度が大きく変化することが分かった.噴出物中における混合海水の質量分率が0 wt.%,すなわちマグマ噴火の場合,噴煙の一部が崩壊して火砕流が発生した.この場合,噴煙の最高高度は30 – 40kmとなった.混合海水が10 wt.%含まれる場合,火砕流はできず強い上昇流となり,噴煙高度は50kmを超えた.さらに混合海水の割合が高い場合(20 wt.%),安定した噴煙柱が形成するが,噴煙高度は40km程度に留まった.また,噴火強度を代表する噴出率を変化させたパラメータスタディを行った結果,噴出率が2 – 3 ×109 kg/sの場合に観測された傘型噴煙半径を説明できた.