11:00 〜 13:00
[U09-P12] トンガ火山噴火により励起された大気波動と津波の結合数値計算
キーワード:トンガ火山、ラム波、津波、気象津波、内部重力波、重力音波
はじめに
2022年1月15日午後1時過ぎ(JST)トンガのフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山が噴火し、その後、日本を含む全球で数日間にわたり気圧変動と海面変動が観測された。特に海面変動は、噴火に伴い通常の津波が励起された場合に想定される到達時刻に先立って各地で観測され始め、さらにカリブ海など大陸の反対側でも観測された点が特徴的であり、これは1883年のクラカトア火山に伴って観測された事象と共通している。
当該の火山噴火の物理的様相の定量的な詳細はまだ明らかになっていない。そこで本研究では、今回の大気海洋擾乱が噴火によりどのように励起され得るかについて、線形モデルを用いて幅広いパラメタをサーベイし理論的考察を加える。
方程式系
圧縮性大気およびこれと結合した海洋津波の火山噴火による強制への線形応答を考える。簡単のため系は水平鉛直 2 次元 (x, t) とし, 地球の回転と球面効果は無視する。津波は浅水方程式で記述できると仮定する。大気の方程式と津波の方程式は, 海面(z=0とする)において, 鉛直流を海洋側から大気下端の境界条件として与え, 圧力擾乱を大気下端から海洋への強制として与えることにより結合させつつ、初期値問題として数値的に解く。計算領域は水平 3200km または 12800km, 鉛直 480km (ただし 400km 以上はスポンジ層) で, 大気の基本場は標準大気, 海の深さは標準値を 4000m とする. 解像度の標準値は 500m である.
初期的な結果
様々の時空間スケールの局在熱強制を与えた結果は以下の様に要約できる.
大気波動の励起特性
幅広いパラメタの局在熱強制によりラム波が励起され, 遠方まで伝わる. ラム波はパルス幅 10km 程度まで分散するが, その後はほとんど非分散的に振る舞う. 振幅とパルス幅の高度依存性も弱い. 一方, 内部重力波の特性 (鉛直波長, 周期など) は、熱強制の高度に非常に敏感である. 特に強制高度が20km 程度より高い場合, 中間圏界面(高度約100km)以下に捕捉された鉛直波長が長い内部重力波が大振幅で励起される. 前者は津波と共鳴(下記を参照)する可能性がある.
津波の励起
強制の広いパラメタにおいて, ラム波と共に伝わる津波が励起される. 気圧偏差と海面変位は同符号であり, 高潮等の場合とは逆である. 一方, 強制 の高度が高い場合に励起される内部重力波は, 典型的な津波の速度 (水深 4000m の場合, 約 200m/s) 程度をカバーする幅広い位相速度をもつため, 津波を共鳴的に励起する. その結果, 地表気圧振幅に対する津波振幅の比は, ラム波が励起する津波よりずっと大きくなる. 内部重力波の分散性を念頭に置くと, 今回、ラム波より後に「通常の津波」として伝播した海面変動は, 内部重力波との共鳴により火山から比較的近傍で励起された可能性がある.
火山近傍の気圧応答
火山近傍での初期の気圧応答は大きな負偏差である。これは火山近傍での観測と整合的である。その後、周期が約200秒程度の正弦波的振動が継続する。これは中間圏界面以下に補足され、水平群速度の小さい重力音波と考えられ、固体地球自由振動を励起する可能性がある。
今後にむけて
本研究の結果を観測された各種波動の諸相を組み合わせ, 噴火の様相 (マグマの熱の大気加熱と海水蒸発への分配など) を推定できる可能性がある。
2022年1月15日午後1時過ぎ(JST)トンガのフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山が噴火し、その後、日本を含む全球で数日間にわたり気圧変動と海面変動が観測された。特に海面変動は、噴火に伴い通常の津波が励起された場合に想定される到達時刻に先立って各地で観測され始め、さらにカリブ海など大陸の反対側でも観測された点が特徴的であり、これは1883年のクラカトア火山に伴って観測された事象と共通している。
当該の火山噴火の物理的様相の定量的な詳細はまだ明らかになっていない。そこで本研究では、今回の大気海洋擾乱が噴火によりどのように励起され得るかについて、線形モデルを用いて幅広いパラメタをサーベイし理論的考察を加える。
方程式系
圧縮性大気およびこれと結合した海洋津波の火山噴火による強制への線形応答を考える。簡単のため系は水平鉛直 2 次元 (x, t) とし, 地球の回転と球面効果は無視する。津波は浅水方程式で記述できると仮定する。大気の方程式と津波の方程式は, 海面(z=0とする)において, 鉛直流を海洋側から大気下端の境界条件として与え, 圧力擾乱を大気下端から海洋への強制として与えることにより結合させつつ、初期値問題として数値的に解く。計算領域は水平 3200km または 12800km, 鉛直 480km (ただし 400km 以上はスポンジ層) で, 大気の基本場は標準大気, 海の深さは標準値を 4000m とする. 解像度の標準値は 500m である.
初期的な結果
様々の時空間スケールの局在熱強制を与えた結果は以下の様に要約できる.
大気波動の励起特性
幅広いパラメタの局在熱強制によりラム波が励起され, 遠方まで伝わる. ラム波はパルス幅 10km 程度まで分散するが, その後はほとんど非分散的に振る舞う. 振幅とパルス幅の高度依存性も弱い. 一方, 内部重力波の特性 (鉛直波長, 周期など) は、熱強制の高度に非常に敏感である. 特に強制高度が20km 程度より高い場合, 中間圏界面(高度約100km)以下に捕捉された鉛直波長が長い内部重力波が大振幅で励起される. 前者は津波と共鳴(下記を参照)する可能性がある.
津波の励起
強制の広いパラメタにおいて, ラム波と共に伝わる津波が励起される. 気圧偏差と海面変位は同符号であり, 高潮等の場合とは逆である. 一方, 強制 の高度が高い場合に励起される内部重力波は, 典型的な津波の速度 (水深 4000m の場合, 約 200m/s) 程度をカバーする幅広い位相速度をもつため, 津波を共鳴的に励起する. その結果, 地表気圧振幅に対する津波振幅の比は, ラム波が励起する津波よりずっと大きくなる. 内部重力波の分散性を念頭に置くと, 今回、ラム波より後に「通常の津波」として伝播した海面変動は, 内部重力波との共鳴により火山から比較的近傍で励起された可能性がある.
火山近傍の気圧応答
火山近傍での初期の気圧応答は大きな負偏差である。これは火山近傍での観測と整合的である。その後、周期が約200秒程度の正弦波的振動が継続する。これは中間圏界面以下に補足され、水平群速度の小さい重力音波と考えられ、固体地球自由振動を励起する可能性がある。
今後にむけて
本研究の結果を観測された各種波動の諸相を組み合わせ, 噴火の様相 (マグマの熱の大気加熱と海水蒸発への分配など) を推定できる可能性がある。