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[U09-P14] 2022年トンガ火山噴火と全球再解析データから地球大気の内部共鳴振動「Pekerisモード」を初めて検出
キーワード:トンガ火山噴火、地球大気の共鳴振動、大気力学
2022年1月のトンガ海底火山の噴火から数時間後に火山から遥か遠方で卓越した大気パルスについて、観測とモデルシミュレーションを用いて検討した。 静止衛星ひまわり8号の放射輝度観測を解析し、予想される水平位相速度〜315 m s-1のLamb波の波面と、それとは明瞭に区別できる位相速度〜245 m s-1の波面の両方が検出されることを明らかにした。 後者の波面の位相速度の遅さは、1937年にPekerisによって提唱され、過去1世紀にわたって理想的な理論研究によって提唱されてきたものの、大気中で検出されたことがなかった地球大気の全球内部共鳴振動モードの予想値と一致する。 地上から下部熱圏までを含む高解像度大気大循環モデルを用いて、噴火後のシミュレーションを行った。 火山上空の高温偏差をモデル場に瞬間的に与え、さらに12時間モデルを積分した。 この結果、トンガ火山から数千キロメートル離れたホノルルおよび日本の気圧計によるLamb波の観測とほぼ一致する気圧パルスが再現された。 また、モデル結果は、Lamb波よりも遅く伝わる気圧パルスが存在することと、その擾乱が下部成層圏で180度の位相シフトを伴う鉛直構造を持ち、Pekeris (1937, 1939)ならびにSalby (1979, 1980)らによる内部モードの理論的予測と一致することを示した。 トンガ海底火山の噴火を契機として得られたこれらの結果は、長い観測記録の解析で見られた連続的に鳴り響く全球ノーマルモードであるLamb波(Lamb外部モード)が、より低い周波数の「Pekeris内部モード」という「相方」を持つはずであることを示唆する。 我々は57年間の毎時の全球再解析データの解析を通じてこの予測を確認した。
図:ひまわり8号が噴火約4時間後に観測した9.6μm輝度温度の10分差(2022年1月15日08:40 – 08:30UTの違い)。Lamb外部モードとPekeris内部モードの波面を同定したものをマークしている。
図:ひまわり8号が噴火約4時間後に観測した9.6μm輝度温度の10分差(2022年1月15日08:40 – 08:30UTの違い)。Lamb外部モードとPekeris内部モードの波面を同定したものをマークしている。