日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-10] 地球規模環境変化の予測と検出

2022年5月22日(日) 10:45 〜 12:15 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:河宮 未知生(海洋研究開発機構)、コンビーナ:立入 郁(海洋研究開発機構)、建部 洋晶(海洋研究開発機構)、コンビーナ:Ramaswamy V(NOAA GFDL)、座長:立入 郁(海洋研究開発機構)

11:30 〜 11:45

[U10-04] 地球環境変動と水産資源

★招待講演

*伊藤 進一1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:地球温暖化、海洋生態系、海洋生物資源

海洋生態系は、様々な生態系サービスを提供している。その中でも最も重要なサービスのひとつが食料の供給である。この50年間、魚類に対する需要は増加し続けており、世界の人口が消費する動物性タンパク質の約17%を魚類が占めている。しかし、海洋生物資源が気候変動に対応して変動していることは周知の事実である。ペルーカタクチイワシが世界最大の資源変動を示し、漁獲量が最も多くなる時期には、漁獲量が最小な時期の80倍以上になる数十年規模の変動をすることが知られている。また,多くの漁業生産が盛んな海域では,数十年規模で優占種が入れ替わる魚種交替現象が生じる。北西太平洋では,マイワシ,マサバ,カタクチイワシが太平洋十年規模振動(PDO)に応答して大規模は魚種交替を示す。この魚種交替のメカニズムについては、いくつかの可能性が提案されているが、未だ解明されていない。海洋生物資源の持続的な利用のためには、その資源変動メカニズムを解明することが急務である。PDOなどの気候変動に加え、地球温暖化は、多くの海洋生物資源の分布、生残、再生産に直接的、間接的に影響を与えている。海洋生物資源に影響を与える主な気候変動要因は、温暖化、貧栄養化、貧酸素化、酸性化である。しかし、海洋生態系は複雑な構造をしているため、海洋生物資源の反応は海域により異なり、理解が困難な状況にある。また、漁業力や海洋汚染など他の人為的な影響もあり、地球温暖化が海洋生物資源に及ぼす影響を他の影響と区別することは困難である。海洋生態系の長期的なモニタリングとともに、地球システムモデルと結合した地球規模の漁業生産モデルの開発を進め、海洋生物資源の地球規模の気候変動に対する応答を明らかにする必要がある。