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[AAS01-P07] 地球大気の吸収スペクトルから推定する南極域の水蒸気カラム量
キーワード:水蒸気、スペクトル観測、南極
地球における気象現象に関して水蒸気が果たす役割は大きい。水蒸気の凝結により雲や降水が生じる。雲は地球のアルベドを変化させ、地球全体の熱収支の変化にも関係する他、暴風雪などの悪天候をもたらす。南極地域は地球全体の大気循環の端に位置するため、南極域での水蒸気分布とその輸送を解明することで、地球全体の大気循環や水蒸気輸送を理解する足がかりとなる。そのため各国の観測隊や人工衛星などによって水蒸気の観測が行われてきた。しかし今までの観測には時間的・空間的な限界があり、水蒸気の分布の変化は十分に解明されていない。そこで本研究では、スペクトルタイプが広く知られている標準星を中心とした天体のスペクトル観測を実施し、得たスペクトルに含まれる地球大気の影響を解析することによって、視線方向の水蒸気カラム量を手軽に計測する方法を開発した。
観測は203 [mm]シュミットカセグレン式望遠鏡に可視光分光器を組み合わせた装置を用い、日本の南極観測の拠点である昭和基地の観測棟屋上にて行った。本装置は目標天体の600-900 [nm]の波長域におけるスペクトルを観測でき、1時間程かけて西の空を中心とした10数天体を撮影する掃天観測と、天頂付近の天体を10分ごとに撮影する集中連続観測のふたつの観測を実施した。観測期間は2021年2月11日から10月4日までである。目標天体はSIMBADデータベースを用いてVバンドでの等級が5以上の天体を選定した。
取得した標準星スペクトルをカタログの値で割ることで、地球大気に由来する吸収スペクトルを計算し、H2Oの等価幅ととO2の等価幅の比を吸収比として導出した。HR74を目標とした観測において、観測時の地上水蒸気圧と吸収比の相関は-0.4であった。しかし、本観測の実施中に実施されたラジオゾンデ観測の結果から、地上水蒸気圧と可降水量は単純な関係でないことが示されたため、この結果は驚くべきことではない。一方可降水量と吸収比の相関は0.9であり、両者に強い相関があった。従って本観測方法で得られる吸収比を用いることで可降水量の推定が可能であると言える。スペクトル撮影は1天体1分程度で行えるため、本方法はこれまで観測の行われていなかった数10分から数分程度の可降水量の変化を捉える足がかりとなりうる。更に全天カメラを用いて空の複数個所を同時に観測することが出来れば、水蒸気カラム量の水平分布の解明も期待できる。
観測は203 [mm]シュミットカセグレン式望遠鏡に可視光分光器を組み合わせた装置を用い、日本の南極観測の拠点である昭和基地の観測棟屋上にて行った。本装置は目標天体の600-900 [nm]の波長域におけるスペクトルを観測でき、1時間程かけて西の空を中心とした10数天体を撮影する掃天観測と、天頂付近の天体を10分ごとに撮影する集中連続観測のふたつの観測を実施した。観測期間は2021年2月11日から10月4日までである。目標天体はSIMBADデータベースを用いてVバンドでの等級が5以上の天体を選定した。
取得した標準星スペクトルをカタログの値で割ることで、地球大気に由来する吸収スペクトルを計算し、H2Oの等価幅ととO2の等価幅の比を吸収比として導出した。HR74を目標とした観測において、観測時の地上水蒸気圧と吸収比の相関は-0.4であった。しかし、本観測の実施中に実施されたラジオゾンデ観測の結果から、地上水蒸気圧と可降水量は単純な関係でないことが示されたため、この結果は驚くべきことではない。一方可降水量と吸収比の相関は0.9であり、両者に強い相関があった。従って本観測方法で得られる吸収比を用いることで可降水量の推定が可能であると言える。スペクトル撮影は1天体1分程度で行えるため、本方法はこれまで観測の行われていなかった数10分から数分程度の可降水量の変化を捉える足がかりとなりうる。更に全天カメラを用いて空の複数個所を同時に観測することが出来れば、水蒸気カラム量の水平分布の解明も期待できる。