日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS02] 気象の予測可能性から制御可能性へ

2023年5月22日(月) 15:30 〜 16:45 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:三好 建正(理化学研究所)、中澤 哲夫(東京大学大気海洋研究所)、Shu-Chih Yang(National Central University)、高玉 孝平(科学技術振興機構)、座長:三好 建正(理化学研究所)、Tetsuo Nakazawa(Meteorological Research Institute, Japan Meteorological Agency)

16:15 〜 16:30

[AAS02-09] コールドプールをつくるフォーシングに対する対流の応答

*佐藤 正樹1,2中井 舜乃祐1平岩 純1 (1.東京大学大気海洋研究所、2.横浜国立大学台風科学技術研究センター)

キーワード:対流、コールドプール、台風、壁雲

大気の積雲対流の励起には、大気混合層内において雨滴の蒸発によって生成されるコールドプールの力学が重要な役割を果たしていることが知られている。本研究では、雨滴の蒸発による非断熱冷却を想定し、混合層に冷却源を強制として与えた場合の対流の応答について、数値シミュレーションによって調べる。数値モデルSCALEを用いて、96 km × 96 km の二重周期境界条件領域における水平格子間隔1 kmの放射対流平衡状態を駆動する。x方向の中央付近に、y方向に一様な強制を与える。強制は高さ1 km以下の領域に、一様な冷却源 -d K/℃ を与える。強制の幅を1, 2, 4, 6 km と変化させた。その結果、強制の幅を2 km 以上の場合には対流の発生域が領域のx方向の両端に局在化し、強制の影響が全域にわたることがかわった。強制の幅が 1km のときには対流抑制域は概ね領域の半分に留まる。さらに領域の中央に円形の強制を与えた場合を調べた。対流の抑制域は、概ね強制の大きさの5-10倍に及ぶことがわかった。強制域での大気下端の温度低下は数度程度であり、強制による質量輸送と海面からの顕熱供給によりコールドプール内温度分布が定まる。強制の強度と海面からの熱供給のバランスにより、コールドプールの拡がる領域が定まる。
 同様な強制を2022年台風第14号Nanmadolに適用した実験を stretch-NICAM を用いて実験を行った。円形の領域の強制を固定位置に適用する。強制の領域の大きさ、位置に対する台風の内部構造の変化を調べる。予備的な実験の結果では、台風の中心域に強制を与えると熱力学的な効果により強度が弱化した。今後、台風の壁雲やスパイラルバンドに有効に影響する強制の性質について調べる。本研究は、JST Moonshot R&D Grant Number JPMJMS2282 の支援を受けています。