日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS03] Extreme Events and Mesoscale Weather: Observations and Modeling

2023年5月23日(火) 15:30 〜 16:45 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:竹見 哲也(京都大学防災研究所)、Sridhara Nayak(Japan Meteorological Corporation)、飯塚 聡(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:竹見 哲也(京都大学防災研究所)、Sridhara Nayak(Japan Meteorological Corporation)

15:45 〜 16:00

[AAS03-06] 二重偏波気象レーダのための大気乱流を考慮した降雨物理モデルに基づく受信信号シミュレータの開発

*日野 史敬1、北原 大地1和田 有希1妻鹿 友昭1牛尾 知雄1、井口 俊夫1、吉川 栄一2菊池 博史3 (1.大阪大学、2.JAXA、3.電気通信大学)

キーワード:二重偏波気象レーダ、大気乱流、確率密度関数、パワースペクトル密度、偏波パラメータ

局地的豪雨による災害の増加に伴い,より短時間かつ高精度での降雨予測が必要とされており,水平・垂直二種類の受信信号を用いて高精度に予測を行う二重偏波気象レーダの開発や導入が進んでいる.多大な時間と予算を費やす気象レーダ開発作業を効率化するために,実際の受信信号を高精度に模倣できるシミュレータが求められている.これまでに多くのシミュレータが提案されてきたが,それらは二種類に大別される.一方は,粒径分布や風速などの降雨状況から,レーダ反射因子や偏波間位相差変化率などの偏波パラメータを出力するものである.もう一方は,偏波パラメータを入力として,統計的性質がそれに一致する受信信号の時系列を複素数値確率ベクトルの実現値として出力するものである.しかしながら,各シミュレータは独立に提案されているので,降雨状況から受信信号の確率密度関数までが一気通貫した降雨物理モデルで導出されていない.本研究では,より高精度かつ使い勝手の良いシミュレータの実現のために,扁平・散乱・終端速度を考慮する従来の降雨物理モデルに大気乱流を組み入れる.これによって,降雨状況から受信信号のパワースペクトル密度を降雨物理モデルに基づいて求められるようになり,その逆フーリエ変換結果が共分散行列となる円対称複素ガウス分布を受信信号の確率密度関数として導出できる.我々のシミュレータでは,ユーザが選択した扁平・散乱・終端速度・大気乱流モデルに基づいて,気象レーダの仕様と粒径分布及び風速から,受信信号の時系列と偏波パラメータが出力される.実際に,Pruppacher–Beardの扁平モデル,Rayleigh–Gansの散乱モデル,Atlas–Srivastava–Sekhonの終端速度モデル,単純化したYanovskyの大気乱流モデルを用いた際に,二重偏波信号が適切な偏波パラメータと共に正しく生成されたことを確認した.今後は,より現実的かつ複雑な扁平・散乱・終端速度・大気乱流モデルの導入や,パルス圧縮された信号の生成への対応を行う予定である.