日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 気象学一般

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)、佐藤 正樹(東京大学大気海洋研究所)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、座長:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)

13:45 〜 14:00

[AAS06-01] 突風に先行する雷活動の激化における霰の成長の影響

★招待講演

*近藤 誠1佐藤 陽祐2 (1.北海道大学理学院、2.北海道大学理学研究院)


キーワード:雷、ダウンバースト、霰、数値シミュレーション

突風に先行する雷活動の激化(Lightning Jump; LJ[1])の発生メカニズムを解明することは,雷観測データを突風予測に用いるために重要である.本研究では雷活動を直接計算できる気象雷モデルSCALE[2][3][4]を用いて,突風の一つであるダウンバーストを対象とした理想実験を行い,ダウンバーストと先行する雷活動をもたらす積乱雲内部における霰等の雲粒子と電荷分離の特性を調査した.
理想実験は初期値を1994年9月8日に発生した埼玉県美里町でダウンバースト[5]が発生した時の前橋と館野のサウンディングを基とした水平一様の気象場として与え,過去に同事例の理想実験を行ったGuo et al. (1999)[6]と同様に,計算領域南西側に最大で気温が領域平均から4 K高い暖気塊を配置した.
理想実験の結果,90分の計算期間中に100 mm/h を超える強い降水に伴う最大風速が40 m/s を超えるダウンバーストが4回発生した.この4回のダウンバーストの内,2回目のダウンバーストの発生10分前に発雷相当数が増加したLJに相当する現象が計算された.このLJ発生前後の霰の粒子の重さを質量混合比と数濃度から導出した結果,ダウンバースト発生直前には重い霰の粒子数が多い一方で,LJ発生時には重い霰の粒子数が少ないことが示された.また,LJ発生時には霰と雪の衝突による電荷分離が活発であったことから,ダウンバースト発生時のような大きい粒子の霰の生成に適さない環境が,電荷分離に適した霰と雪と液水の共存する環境であったことが示唆された.

参考文献
1. Williams, E. R., and Coauthors, 1999: The behavior of total lightning activity in severe Florida thunderstorms. Atmos. Res., 51 , 245–264. doi:10.1016/S0169-8095(99)00011-3
2. Nishizawa, S., Yashiro, H., Sato, Y., Miyamoto, Y. & Tomita, H. Influence of grid aspect ratio on planetary boundary layer turbulence in large-eddy simulations. Geosci. Model Dev. 8, 3393–3419 (2015).
3. Sato, Y. S. Nishizawa, H. Yashiro, Y. Miyamoto, Y. Kajikawa, & H. Tomita. Impacts of cloud microphysics on trade wind cumulus: which cloud microphysics processes contribute to the diversity in a large eddy simulation? Prog. Earth Planet. Sci. 2, (2015).
4. Sato, Y., Y. Miyamoto, and H. Tomita, 2019: Large dependency of charge distribution in a tropical cyclone inner core upon aerosol number concentration. Prog. Earth Planet. Sci., 6, 62, doi:10.1186/s40645-019-0309-7.
5. Takayama, H., H. Niino, S. Watanabe, and J. Sugaya, 1997: Downbursts in the northwestern part of Saitama Prefecture on 8 September 1994. J. Meteor. Soc. Japan, 75, 885–905, doi:10.2151/jmsj1965.75.4_885.
6. Guo, X. L., Niino, H., & Kimura, R., 1999. Numerical Modeling on a Hazardous Microburst-Producing Hailstorm. Toward Digital Earth Proceedings of the International Symposium on Digital Earth (Vol. 1, pp. 383– 398). Science Press.