日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 気象学一般

2023年5月21日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)、佐藤 正樹(東京大学大気海洋研究所)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[AAS06-P01] 2018年台風24号(TRAMI)の進路の予測可能性

★招待講演

*仲尾次 晴空1、松枝 未遠2 (1.筑波大学理工情報生命学術院、2.筑波大学計算科学研究センター)

キーワード:2018年台風24号(TRAMI)、台風進路、予測可能性

2018年9月21日にマリアナ諸島近海で発生した2018年台風24号(TRAMI)は、9月30日に和歌山県田辺市付近に上陸し、日本各地に暴風、大雨、高波、高潮だけでなく、塩害、住宅損害、死者4人などの甚大な被害をもたらした。本研究では、ECMWF、JMA、NCEP、UKMOによるアンサンブル予報データを用いてTRAMIの進路予報の精度について検証し、台風の進路の予報に影響を与えた大気場を調査した。9月22日00UTC、23日00UTCを初期時刻とした予報では、全センターにおいてTRAMIの進路をベストトラックに対し西側に予測しているメンバーが多かった。進路のばらつきが大きくアンサンブルメンバー数も多い欧州中期予報センター(ECMWF)による22日00UTC、23日00UTCを初期時刻とした予報に注目した。予報対象時刻の中でも、進路のばらつきが増大し始めた27日00UTCに焦点を当てて解析を行った。27日00UTCを対象時刻とした予報では、TRAMIの中心位置が実況に対して左側や前方にずれていたメンバーが多く、初期時刻22日00UTC、23日00UTCの予報それぞれで78%, 92%を占めていた。また、台風位置の予報誤差が200km以上であったもののうち実況位置に比べて左側に予測したメンバーを”左ずれメンバー”、前方に予測したものを”前ずれメンバー”、位置誤差の方向に関係なく予報誤差が150㎞以下のものを”良いメンバー”とした。3つのメンバー群それぞれの予報大気場に対してコンポジット解析を行った結果、左ずれメンバーは台風の北にある上層トラフの位置を実況に対して東に予報し、一方で前ずれメンバーは上層トラフの張り出しを実況より弱く予報していた。また、22日00UTC、23日00UTC、24日00UTCを初期時刻とした予報の良いメンバーの割合はそれぞれ18%, 22%, 71%で、23日00UTCから24日00UTCにかけて予報が大きく改善された。24日00UTCを初期時刻とした予報では、上層トラフの位置や張り出しが良く再現されていた。本研究により、TRAMIの進路は上層トラフの位置や張り出しの強弱に大きく依存していたことが明らかになり、トラフ予測の不確実性が台風進路予測の不確実性に影響を与えることを示した先行研究と整合的であった。