日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 気象学一般

2023年5月21日(日) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久保田 尚之(北海道大学)、佐藤 正樹(東京大学大気海洋研究所)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[AAS06-P02] 1923年関東大震災に時の台風はどのような影響を与えたか

*筆保 弘徳1、橋田 俊彦1、清原 康友1 (1.横浜国立大学)

キーワード:台風、関東大震災

100年前に起こった1923年関東大震災は,明治以降の我が国における震災として最大規模の被害をもたらし,特に東京において多数の死者・不明者をもたらした火災による被害はこの震災を特徴づけるものである.この地震が発生した9月1日に台風または台風から変わった低気圧(本研究では台風と記す)が本州を横断し,東京に甚大な災害をもたらした火災に強風などの影響を与えたと報告されている.当時の気象状況については,中央気象台による気象観測値や天気図を収録した調査報告などから把握できる.しかし,そのときの台風の実像や,台風が東京の風や震災にどのように影響を与えたかは必ずしも明らかとなっていない.そこで本研究では,現在用いることができるデータを用いて数値シミュレーションを行い,当時の台風の動きを再現した.そして,東京の気象状況がどこまで台風の影響を受けたのかを検証した.
数値予報モデルWRF-4.3を用いて1923年9月1日の気象場のシミュレーションを行った.水平格子間隔15kmのドメイン1(250, 250, 50)と5kmのドメイン2(同数)を設定した.初期値・境界値にはECMWFによる地上気圧と海上風を用いた再解析ERA20Cを利用し,8月30日18JST~9月2日18JSTの計算をした.初期時刻には九州の西の海上に985hPaの台風ボーガスを作成した.東京周辺を詳しく見るためにドメイン2を1日06JSTから1-wayネスティングで計算した.
9月1日06JSTの気圧配置をみると,解析天気図と比べてやや西よりではあるが,九州~中国地方を通過して日本海に抜けた990hPaの台風が存在する.その後,勢力を弱めながら2日06JSTには三陸沖まで進む.この三陸沖には,天気図では低気圧があることが確認できる.
今回,初の試みとして数値シミュレーションにより,1923年関東大震災時の台風の動きと,火災を考慮しない場合の東京の風速の変化傾向などを再現した.再現された台風の位置や風の変化が,当時の天気図や観測値の変化と比較して,数時間程度の遅れがあるのは,再解析データERA20Cの特性も反映している可能性がある.このことにも留意して,火災の発生を考慮していない再現結果と観測を比較すると,東京(中央気象台,品川)では,地震の発生直後(1日12時)は,当時の観測のとおり台風の影響もあって強い風であったが,中央気象台の17時頃以降の強い風は周辺で発生した火災の影響を大きく受けているとみられ,その火災の影響による強い風はさらに早い時刻からであった可能性も考えられる.
今後,台風の動きの再現における時間のずれの調査とともに,風と大規模な火災との相互作用についての調査も重要と考えられる.