日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS07] 大気化学

2023年5月22日(月) 09:00 〜 10:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:坂本 陽介(京都大学大学院地球環境学堂)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、岩本 洋子(広島大学大学院統合生命科学研究科)、座長:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、石戸谷 重之(産業技術総合研究所)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)

09:15 〜 09:30

[AAS07-02] ORを用いた都市域におけるCO2排出源の特性解析

*新井 豊1、胡 其多1今須 良一1石戸谷 重之2近藤 裕昭2、菅原 広史3 (1.東京大学 大気海洋研究所、2.国立研究開発法人 産業技術総合研究所、3.防衛大学校 地球海洋学科)

キーワード:二酸化炭素、酸素、酸素と二酸化炭素の交換比、都市域、二酸化炭素の排出源、大気輸送モデル

化石燃料消費や生物活動に伴うO2とCO2の交換比:OR(Oxidative Ratio)は、大気中O2濃度とCO2濃度の変動(ΔO2,ΔCO2)の比としてOR = -ΔO2/ΔCO2で定義される。本研究では、ORの観測値とモデル計算値の比較から、都市域におけるCO2排出源の特性解析を試みる。
CO2とO2の濃度の連続測定は、東京(代々木)では、2016年3月以降、磁気式O2分析計(POM-6E,Air Liquide)とNDIR(Li-820,LI-COR)を使用して実施している。空気の採取高度は52mと37mで、10分間平均している。一方、茨城(つくば)では、2012年2月以降、質量分析計(Thermo Scientific Delta-V)によりCO2とO2の濃度測定を実施している。空気採取は実験棟屋上にて地上からの高さ8mで行っている。今回は、上記期間のうち、2016~2018年のデータを解析した。
CO2濃度の数値計算は、領域輸送モデルAIST-MMにより空間分解能 2kmで実施。CO2排出源データは、EAGrid2000-Japanを基準に、NIES GHGインベントリオフィスのデータを用いてスケーリングし、対象年に適用した。計算は、「火力発電所」、「自動車」、「植物」、「その他の人為的排出源」の排出源ごとに行い、それぞれ固有のOR値に計算された大気中濃度の重みをかけて合計した値を、モデル計算されたOR値とする。この時、「自動車(OR=1.44)」と「植物(OR=1.10)」のOR値は固定し、「火力発電所」には石炭(OR=1.17)、石油(OR=1.44)、天然ガス(OR=1.95)の3種類の燃料の可能性があり、「その他の人為的排出源」には、石油液化ガス(OR=1.44)、天然ガス(OR=1.95)の2種類の燃料の可能性があるとする。これにより、「火力発電所」と「その他の人為的排出源」の燃料の組み合わせとしては6通りのOR値の可能性があることになり、観測されたOR値との比較から、実際に使用されていた燃料の組み合わせを推定することができる。
実際に解析されたOR値については、日々の変動が激しいことから、月平均値を求め、その季節変化のカーブが最も観測に近いものを推定された燃料の組み合わせとした。その結果、代々木、つくばのどちらのサイトにおいても、「火力発電所」は石油を主要な燃料とした場合に比較的観測とモデルが一致する傾向にあった。一方、「その他の人為的排出源」については、代々木は天然ガス、つくばは石油液化ガスが主要な燃料であると推定された。この結果は、東京都内では家庭用には主に天然ガスが使用され、つくばではプロパンガスが使用されているという統計データと整合する結果である。ただし、これらの結果には、風向依存性や大気の安定度による違いが確認されており、石炭火力発電所や石炭を使用している製鉄所などの影響を受けている可能性が考えられる。今後、気象条件なども考慮した詳細な解析を行っていきたい。