09:00 〜 10:30
[AAS07-P22] 都市郊外域でのGC-FIDおよびSIFT-MSとNMHC計での測定比較
キーワード:揮発性有機化合物、選択イオンフローチューブ質量分析計、ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化検出器
光化学オキシダントは前駆体が順調に減少しているにもかかわらずあまり改善がみられておらず、現状でも環境基準達成率がほぼゼロパーセントの状況である。前駆体である揮発性有機化合物(VOC)は非メタン炭化水素(NMHC)計による常時観測が行われてきたが、オキシダント生成の効率はそれぞれの物質で違うため、個別成分での測定により詳細な情報を得ることが必要になってくる。大気観測において個別成分のVOC測定はGC-FIDまたはGC-MSを用いた方法が一般的であるが、大気濃縮過程の問題などでアルデヒドなどの含酸素揮発性有意化合物(OVOC)の正確な分析が困難である。選択イオンフローチューブ質量分析計(SIFT-MS)は濃縮過程を必要とせず、連続測定結果を得ることができ、OVOCの計測も可能である。これまであまり実大気計測で利用されてこなかったSIFT-MSでのVOC連続測定の評価をするとともに、NMHC計での計測値とGC-FIDおよびSIFT-MSによる測定値の比較を行った。2021年秋、2022年夏、2022年秋、2023年冬でそれぞれ2週間ほどの期間、東京都八王子市の東京都都立大学キャンパス内において、SIFT-MS(VOICE200ultra, Syft Technologies社)による外気測定を行い、同時におこなったGC-FIDによる定期的な測定と比較をした。約5km離れた愛宕局のNMHC計での測定結果とGC-FIDでの測定値にSIFT-MSのOVOCの測定結果を加えたものを比較した。SIFT-MSの外気測定の結果をGC-FIDのものと比較して各VOCについて相関プロットをとり、どのリージェントイオン(H3O+, NO+, O2+)を用いて濃度算出をするのが良いのかも確認した。濃度が高いVOCについては良好な相関が得られた。各観測期間において相関プロトでの傾きに違いか見られるVOCもあった。そのため機器の設定や大気の湿度による影響を懸念したが、isopreneなどは季節によって大きく濃度が異なっている。全期間を通じたプロットでは全体として整合していると解釈可能であった。GC-FIDで測定可能なVOCと、SIFT-MSによるOVOCの割合は夏季に相対的にOVOCの寄与が大きくなる傾向がみられ、夏季にはVOCの酸化反応の進行が促進されることと整合的であった。NMHC計との比較ではほぼおなじか、OVOC分が過剰になるような傾向がみられた。