13:45 〜 15:15
[AAS08-P03] AI・HPC技術で気象学の未来を拓く-富士通-横浜国大台風リサーチ・ラボ共同研究講座-
★招待講演
キーワード:AI技術、HPC、気象学、台風
横浜国立大学 先端科学高等研究院 台風科学技術研究センター(TRC)は、2022年11月に富士通-横浜国大台風リサーチラボ共同研究講座(以降リサーチラボとする)を設置した。本発表ではこのリサーチラボの紹介と今後の研究開発を紹介したい。
本リサーチラボの将来を見据えた大目標は、災害対策や環境問題などの社会課題に対して、開発した技術や発見した知見をもとに、台風を脅威から恵みに変える社会の実現に貢献することである。富士通株式会社は理化学研究所との共同開発で世界トップクラスのスーパーコンピュータ「富岳」を開発するなど、コンピューティング技術に関する実用化で世界を先導する企業である。一方で、TRCは国内における台風研究の第一人者を揃え、気象学・気候学を基軸に台風に関わる幅広い研究を進めている。この両者が協調することで、AI・HPC技術を活用した、気象分野における新しい解析技術の創出をめざす。さらに、その研究開発を通して、次世代のプレーヤーとして世界に幅広く活躍する研究者を育てることにもつなげたい。
我々は、富士通株式会社の説明可能AI技術を用いた台風・台風の前駆体の解析、および最先端のHPC技術を駆使した大気数値モデルの最適化・精緻化・高効率化の2点を主要研究課題と位置づけている。AI技術の台風解析への適用例として、本リサーチラボのメンバーである松岡氏による先行研究(Matsuoka et al. 2018)がある。彼らは数値モデルのシミュレーション結果を教師データとし、台風の前駆体にあたる雲システムを検出するAIモデルを構築した。この手法をロールモデルとして、教師データの見直しや説明変数の追加によって、より初期の発生段階から前駆体を検出できるようにAIモデルを改良したい。さらにAIモデル構築のバックエンドに富士通株式会社の説明可能AIを用いて、検出した台風の前駆体の特徴についてAIモデルを用いて説明することで、台風に発達しうる前駆体のこれまでに得られなかった特徴を明らかにしたい。これらの知見は台風の発生と非発生の差を議論し、早期予報へつなげるための重要な足がかりになると期待する。
富士通株式会社が持つHPC技術の適用先として、全球雲システム解像モデルNICAM (Tomita and Satoh 2004; Satoh et al. 2008; Satoh et al. 2014)と領域雲システム解像モデルCReSS(Tsuboki and Sakakibara 2002; Tsuboki 2007)を対象に選定した。両モデルは、熱帯大気や台風を対象とした数値シミュレーションにおいてこれまで多くの成果をあげてきた屈指の数値モデルである。本リサーチラボでは、CPUのみの従来型高並列計算機からGPUを用いた次世代型高並列計算機までを念頭に幅広いアーキテクチャに対して研究を進める。大きな論点は、現行のコーディング環境を崩さず、従来型アーキテクチャから将来型アーキテクチャへシームレスに移行することが可能なのかどうか、という点である。米国エネルギー省の気候モデルE3SMは伝統的なFortranコードを凍結させ、C++とKokkosという新しいコーディング環境でGPU計算機への適用を図った。このような大きな変換点が必須なのかどうかは、モデル開発グループに大きな懸念材料だと考える。だからこそ、コンピューティング技術で世界をリードする富士通株式会社とアプリケーション開発者が協調して研究開発を進め、いち早く将来のアーキテクチャへ適用する道筋を立てたい。
本リサーチラボの将来を見据えた大目標は、災害対策や環境問題などの社会課題に対して、開発した技術や発見した知見をもとに、台風を脅威から恵みに変える社会の実現に貢献することである。富士通株式会社は理化学研究所との共同開発で世界トップクラスのスーパーコンピュータ「富岳」を開発するなど、コンピューティング技術に関する実用化で世界を先導する企業である。一方で、TRCは国内における台風研究の第一人者を揃え、気象学・気候学を基軸に台風に関わる幅広い研究を進めている。この両者が協調することで、AI・HPC技術を活用した、気象分野における新しい解析技術の創出をめざす。さらに、その研究開発を通して、次世代のプレーヤーとして世界に幅広く活躍する研究者を育てることにもつなげたい。
我々は、富士通株式会社の説明可能AI技術を用いた台風・台風の前駆体の解析、および最先端のHPC技術を駆使した大気数値モデルの最適化・精緻化・高効率化の2点を主要研究課題と位置づけている。AI技術の台風解析への適用例として、本リサーチラボのメンバーである松岡氏による先行研究(Matsuoka et al. 2018)がある。彼らは数値モデルのシミュレーション結果を教師データとし、台風の前駆体にあたる雲システムを検出するAIモデルを構築した。この手法をロールモデルとして、教師データの見直しや説明変数の追加によって、より初期の発生段階から前駆体を検出できるようにAIモデルを改良したい。さらにAIモデル構築のバックエンドに富士通株式会社の説明可能AIを用いて、検出した台風の前駆体の特徴についてAIモデルを用いて説明することで、台風に発達しうる前駆体のこれまでに得られなかった特徴を明らかにしたい。これらの知見は台風の発生と非発生の差を議論し、早期予報へつなげるための重要な足がかりになると期待する。
富士通株式会社が持つHPC技術の適用先として、全球雲システム解像モデルNICAM (Tomita and Satoh 2004; Satoh et al. 2008; Satoh et al. 2014)と領域雲システム解像モデルCReSS(Tsuboki and Sakakibara 2002; Tsuboki 2007)を対象に選定した。両モデルは、熱帯大気や台風を対象とした数値シミュレーションにおいてこれまで多くの成果をあげてきた屈指の数値モデルである。本リサーチラボでは、CPUのみの従来型高並列計算機からGPUを用いた次世代型高並列計算機までを念頭に幅広いアーキテクチャに対して研究を進める。大きな論点は、現行のコーディング環境を崩さず、従来型アーキテクチャから将来型アーキテクチャへシームレスに移行することが可能なのかどうか、という点である。米国エネルギー省の気候モデルE3SMは伝統的なFortranコードを凍結させ、C++とKokkosという新しいコーディング環境でGPU計算機への適用を図った。このような大きな変換点が必須なのかどうかは、モデル開発グループに大きな懸念材料だと考える。だからこそ、コンピューティング技術で世界をリードする富士通株式会社とアプリケーション開発者が協調して研究開発を進め、いち早く将来のアーキテクチャへ適用する道筋を立てたい。