日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS10] 東アジアの異常天候・都市災害と気候変動との関わり

2023年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (3) (オンラインポスター)

コンビーナ:Masaru Inatsu(北海道大学大学院理学研究院)、日下 博幸(筑波大学)、竹見 哲也(京都大学防災研究所)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[AAS10-P01] 梅雨末期における西日本への水蒸気輸送の強化と豪雨頻発化

*松村 伸治1飯塚 聡1 (1.防災科学技術研究所)

近年,西日本では豪雨が頻発しておりこれまでにない大規模な災害に見舞われている.注目すべきことに,平成29年7月九州北部豪雨,平成30年7月豪雨,令和2年7月豪雨といった大規模豪雨は梅雨末期の7月上旬に集中している.このような個々の豪雨イベントの理解や短期予測の研究は精力的に進められている一方,豪雨の頻発化といった中長期的な気候変動研究は十分とはいえないのが現状である.そこで本研究では過去40年間(1982~2021年)における梅雨期の季節進行を対象として,梅雨の長期変化の気候学的な理解を試みる.実際に,最近の20年間では西日本の降水量は7月上旬にピークに達しており,特に,7月6-10日では東シナ海を中心とした低気圧性循環,日本の太平洋沖で高気圧性循環(太平洋高気圧)が強まることで,西日本に向かって南からの水蒸気輸送が強化され降水増加をもたらしている.この大気循環の長期変化は年々変動の変調と整合的であり(Matsumura and Horinouchi 2023),東シナ海南部周辺で降水構造が梅雨前線から積雲対流へ移行するに従ってロスビー波列が生じたものと理解できる.さらに,この積雲対流化はdeep convectionの閾値とされる海面水温28℃が6月末に到達する東シナ海南部の黒潮前線上で顕著であり,水温と前線による海洋の影響が示唆される.黒潮前線帯では温暖化傾向であることから,黒潮前線の強化と海面水温28℃の早期化によって積雲対流が活発化し,大気循環を駆動することで西日本へ多量の水蒸気が供給されることになる.その結果として,7月上旬の大規模豪雨の頻発に繋がっているものと考えられる.

参考文献
Matsumura, S., and T. Horinouchi, 2023: Decadal shift in summer precipitation variability over East Asia in the mid-2000s and wave propagation toward North America. J. Climate, https://doi.org/10.1175/JCLI-D-22-0292.1, in press.