日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS10] 東アジアの異常天候・都市災害と気候変動との関わり

2023年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (3) (オンラインポスター)

コンビーナ:Masaru Inatsu(北海道大学大学院理学研究院)、日下 博幸(筑波大学)、竹見 哲也(京都大学防災研究所)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[AAS10-P03] Tモード筋状雲事例に対する温暖化実験

*佐藤 海斗1稲津 將2 (1.北海道大学大学院理学院、2.北海道大学大学院理学研究院)

冬季、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)に伴って季節風に直交するTモード筋状雲が観測される1 。本研究では領域気象気候モデルSCALE-RM 2,3 を用いて、Tモード筋状雲が発生した事例の再現実験および擬似温暖化実験を行った。擬似温暖化実験では、日本海海水温と大気の温度をそれぞれ一様に上昇させて、JPCZとTモード筋状雲の構造がどのように変化するかを調査した。
 本研究では2021年12月25日から発生したJPCZの事例を対象とした。計算期間を12月24日から28日とし、初期値・境界値にはMANLを用いた。擬似温暖化実験では初期値・境界値に「海水温のみ」、「海水温、大気の温度両方」「大気の温度のみ」をそれぞれ2Kまたは4K上昇させた6種類の実験を行った。
 再現実験の結果、JPCZとTモード筋状雲、Lモード筋状雲を再現できた。また、Tモード筋状雲は線形理論 4 で説明されている鉛直シアに沿って雲列ができていた。温暖化実験では「海水温のみ」、「海水温、大気の温度両方」を上昇させたとき、Tモード筋状雲の高さが高くなっていることが示された。これは潜熱フラックスが「海水温のみ」、「海水温、大気の温度両方」を上昇させたとき大きくなっていることが原因だと考えられる。また、「海水温のみ」を上昇させたとき「海水温、大気の温度両方」を上昇させたときに比べTモード筋状雲はより高くなっていた。これは顕熱フラックスが「海水温のみ」を上昇させたときの方が「海水温、大気の温度両方」を上昇させたときに比べ大きくなっていることが原因だと考えられる。これらから潜熱フラックス、顕熱フラックスがTモード筋状雲の高さに重要であることが示唆された。

参考文献
1. Murakami M., M. Hoshimoto, N., Orikasa, H. Horie H. Okamoto, H. Kuroiwa, H. Minda and K. Nakamura,2002: Inner structures of snow bands associated with the Japan Sea polar-airmass convergence zone based on aircraft observations.
2.Nishizawa, S., Yashiro, H., Sato, Y., Miyamoto, Y. & Tomita, H. Influence of grid aspect ratio on planetary boundary layer turbulence in large-eddy simulations. Geosci. Model Dev. 8, 3393–3419 (2015).
3. Sato, Y. S. Nishizawa, H. Yashiro, Y. Miyamoto, Y. Kajikawa, & H. Tomita. Impacts of cloud microphysics on trade wind cumulus: which cloud microphysics processes contribute to the diversity in a large eddy simulation? Prog. Earth Planet. Sci. 2, (2015).
4.Asai, T., 1972: Thermal instability of a shear flow turning the direction with height. J. Meteor. Soc. Japan, 50,526-532.