日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC25] 雪氷学

2023年5月22日(月) 10:45 〜 12:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:砂子 宗次朗(防災科学技術研究所)、谷川 朋範(気象庁気象研究所)、渡邊 達也(北見工業大学)、大沼 友貴彦(宇宙航空研究開発機構)、座長:大沼 友貴彦(宇宙航空研究開発機構)

10:45 〜 11:00

[ACC25-06] 日本における現在の永久凍土分布の推定と将来予測

*横畠 徳太1岩花 剛2斉藤 和之3末吉 哲雄3、石崎 紀子1 (1.国立環境研究所、2.アラスカ大学フェアバンクス校、3.海洋研究開発機構)

キーワード:永久凍土、山岳域、気候変動

地中の温度が2年以上連続して0度を下回る領域は「永久凍土」と呼ばれ、北半球陸域に存在するが、現在の日本ではその存在は非常に珍しく、北海道大雪山・富士山・立山など、ごく限られた地点でしか永久凍土は確認されていない。この研究では、1930年頃から現在までの気候情報を用いることにより、日本全域において永久凍土が存在しうる場所の推定を行った。その結果、現在の日本では、大雪山・富士山・立山に加えて、北海道の日高山脈・知床岳・斜里岳・阿寒岳・羊蹄山と、北アルプス・南アルプスにも、永久凍土が存在する可能性のある場所があることが分かった(図)。さらに、将来の気候予測情報を利用して、永久凍土を維持できる領域がどのように変化するかの予測を行った。その結果、大雪山や富士山のように、緯度や標高が高い地域では21世紀末に永久凍土を維持しやすい環境がわずかに残るものの、日本全域で永久凍土を維持する環境が急激に減少することが予測された。今回の研究成果は、多様な生態系を維持する山岳環境の大きな変化が避けられないことを示している。山岳環境を監視し、気候変動に対するさまざまな適応策を検討することが重要である。上記の研究(Yokohata et al. 2022, https://progearthplanetsci.springeropen.com/articles/10.1186/s40645-022-00498-z)では日本陸域の気温予測を利用して、過去の研究によって得られた経験則をもとに永久凍土を推定した。現在私たちは、陸面物理過程モデルを利用した日本陸域での高解像度計算を行うことにより、より信頼性の高い推定を行う研究を計画している。また、これまでに確認されてこなかった地点で永久凍土を新たに発見する観測を行うことも計画している。これらの研究の進捗についても紹介する。