日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC25] 雪氷学

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (6) (オンラインポスター)

コンビーナ:砂子 宗次朗(防災科学技術研究所)、谷川 朋範(気象庁気象研究所)、渡邊 達也(北見工業大学)、大沼 友貴彦(宇宙航空研究開発機構)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/22 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[ACC25-P13] 南極大陸メルボルン山の 正規化植生指数の推移:衛星リモートセンシングと GIS 分析

*串田  龍弥1 (1.横浜国立大学大学院環境情報学府)

キーワード:リモートセンシング、植生、南極大陸

メルボルン山は、南極大陸の東南極に位置する活火山である。この地域は本来、生物にとって過酷な環境であるが、活火山の影響や気温の上昇により、蘚苔類や藻類などの植生が観測されている。植生域は、氷床に比べて熱をよく吸収し、氷床融解の一因になっている。1987 年にメルボルン山の植生の現地調査が行われており、この調査では緑色のコケ、藻類に加え、 紅藻の存在も確認されている。しかしメルボルン山では、植生面積の分布や、地表面温度と の関係について年変化、季節変化を調べた研究がない。本研究では、2019~2021 年の期間 における紅藻を含む植生と積雪面積、地表面温度の推移の比較を行い、植生の生育する条件 を分析した。 本研究は、長期間にわたる植生面積の推移を明らかにし、その要因を推定することを目的 としている。植生や地表面温度、積雪面積を調査するにあたり、複数の衛星画像を使用した。 植生と積雪面積については、Sentinel-2 の衛星画像を用い、地表面温度については Landsat8、 9 の衛星画像を用いた。研究対象地域の衛星画像は、植生がみられる夏の 11 月~1 月を中 心に取得した。植生は、緑色植物の判別に NDVI、紅藻の判別に赤バンド/緑バンドの指標 を用いた。これらの閾値は研究によって様々だが、一般に植生が少ない場所ほど低い閾値を定めていたので、本研究でも低い閾値を定めた。取得した衛星画像の分析には、Arc GIS Proというソフトを使用した。 3 年分のデータで広範囲での比較(夏季のデータ約 10 日分)と、1 年分の季節変化を 100m グリッド(2021~2022 年の夏季のみ)で局所的な比較を行った。加えて、標高データと重ね合わせ、植生や地表面温度の傾向を探った。 まず、広範囲での比較については、対象地域全域の合計植生面積と、平均地表面温度を比較した。植生面積は 12~1 月上旬、地表面温度は 12 月中旬に高くなる傾向が見られた。積雪面積との比較では、積雪面積の増加に伴い植生面積の減少が見られた。また100m グリッドごとの植生面積と地表面温度を散布図にしてプロットした結果、近似直線は正の値を示し、相関係数も0.2~0.5と弱いながらも相関があることが確認できた。標高データを用いて、3D マップで植生分布と地表面温度を観察したところ、北側斜面に植生が繁茂しており、地表面温度の高い地点も同じ斜面に多いことがわかった。 メルボルン山の植生は、夏季の 12 月~1 月上旬ごろに最も多くなり、その分布は北側斜面に集中していた。また 100mグリッドでは、植生面積と地表面温度の相関はすべて正の値を示した。このことから、地表面温度の高い場所ほど、植生が存在しているという結論に至った。