15:45 〜 16:00
[ACC26-07] グリーンランド南東部SE-Dome II アイスコアを用いた過去220年間の涵養量と融解履歴の復元
★招待講演
キーワード:グリーンランド、アイスコア、古環境、SE-DomeⅡアイスコア
近年の北極域の温暖化により、グリーンランド氷床の表面融解は加速している。気候変動と氷床の表面融解の関係を詳細に理解することは、温暖化による氷床質量損失の推定の精度向上に重要である。本研究では、グリーンランド氷床の他地域と比較して年涵養量が顕著に多く[1]、気候モデル間で復元された年涵養量に大きなばらつきのある[2]グリーンランド氷床南東部で掘削されたアイスコア(全長250 m; SE-Dome Ⅱコア)を分析した。層位観察、電気伝導度測定、H2O2濃度分析、トリチウム濃度分析から、1799–2020年に相当する深度-年代スケールを一年のずれもなく確立した。そしてSE-Dome Ⅱコアから得られた氷板の厚さと涵養量をERA5による再解析データ(1950–2020年)と比較した。その結果、氷板の厚さは過去220年間で増加し、北極域の気温変化と同調していた。他方で年涵養量(平均1.04 ± 0.20 m w.e. yr−1)は過去220年間において有意な傾向を示さなかった。SE-Dome Ⅱコアの1年あたりの氷板の厚さとERA5による夏季の積算温度には正の相関がみられた。また、SE-Dome Ⅱコアから得られた年涵養量はERA5による年涵養量と一致した。本研究の結果は、グリーンランド氷床南東部における涵養量が北極域の気候変動の影響を受けず過去220年間において一定であることを示し、SE-DomeⅡアイスコアは産業革命前から現在までの環境変動を一年のずれもなく復元しうることを示すものである。
[1] Iizuka et al., 2021: Bull. Glaciol. Res.,39, 1–12. [2] Fettweis et al., 2020: The Cryosphere, 14, 3935–3958.
[1] Iizuka et al., 2021: Bull. Glaciol. Res.,39, 1–12. [2] Fettweis et al., 2020: The Cryosphere, 14, 3935–3958.