日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG30] 中緯度大気海洋相互作用

2023年5月21日(日) 10:45 〜 12:00 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:関澤 偲温(東京大学先端科学技術研究センター)、桂 将太(東京大学大気海洋研究所)、安藤 雄太(九州大学)、木戸 晶一郎(海洋開発研究機構 付加価値創生部門 アプリケーションラボ)、座長:桂 将太(カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリプス海洋研究所)、関澤 偲温(東京大学先端科学技術研究センター)


11:00 〜 11:15

[ACG30-02] 中緯度海洋におけるモード水-季節密度躍層系

★招待講演

*須賀 利雄1 (1.東北大学 大学院理学研究科)

キーワード:海洋循環、大気海洋相互作用、渦位、貯熱量、栄養塩輸送、浮力フラックス

モード水は、冬季の深い混合層に起源を持ち、海水特性の鉛直一様性で特徴づけられる水塊である。「モード」は統計学の最頻値のことである。モード水という名称は、領域的な水温・塩分階級ごとの体積分布において、この水塊の水温・塩分がモードになること、すなわち、領域的に大きな体積を占めることに由来する。モード水の密度の鉛直一様性は、渦位の鉛直極小という性質をもたらす。渦位の保存性ゆえに、モード水は海洋循環のトレーサとして用いられてきた。一方、モード水の形成は海洋から大気への大きな熱放出をともなう局所的な大気海洋相互作用の結果であり、モード水はこれを水温・塩分・厚さの偏差として記憶して広域に広がる。このことから、領域規模から大洋規模での大気海洋相互作用におけるモード水の役割も注目されてきた。さらに、モード水が形成過程で取り込む酸素・二酸化炭素や栄養塩の貯蔵や輸送とその物質循環・生態系における役割にも関心が向けられてきた。モード水を循環のトレーサとして扱う際や冬季混合層の水温の「記憶」として扱う際には、モード水そのもののコアである渦位極小に着目するのは自然である。一方、モード水の大規模大気海洋相互作用や物質循環・生態系における役割を考えるためには、モード水そのものだけではなく、その上の季節密度躍層と一体となった「モード水-季節密度躍層系」として見ることが有用そうである。以上のような観点から、主に北太平洋のモード水研究のレビューし、この系を考えるメリットについて議論する。