日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] オンラインポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG30] 中緯度大気海洋相互作用

2023年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (2) (オンラインポスター)

コンビーナ:関澤 偲温(東京大学先端科学技術研究センター)、桂 将太(東京大学大気海洋研究所)、安藤 雄太(九州大学)、木戸 晶一郎(海洋開発研究機構 付加価値創生部門 アプリケーションラボ)


現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[ACG30-P13] 気候変化から探る2010年以降ユーラシア大陸北東部において災害級の冷夏が発生していない理由

*天野 未空1立花 義裕1安藤 雄太2,3 (1.三重大学 大学院 生物資源学研究科、2.新潟大学 理学部、3.鈴鹿工業高等専門学校)


キーワード:ユーラシア大陸北東部、冷夏、南北傾斜高気圧、気候変化

温暖化で猛暑が当たり前になった場合,将来冷夏は発生しないのだろうか?極端な冷夏が発生するかどうかを知ることは,特に作物が冷夏に適応する必要があるかどうかを判断する上で重要である.過去に何度も極端な冷夏に見舞われた日本は,米の緊急輸入で農業の混乱を乗り切った.しかし,本研究では,2010年にユーラシア大陸北東部で北極振動の正に伴う気候変化が起こり,現在のような気候が続く限り,極端な冷夏が再び発生する可能性は極めて低いことを示した.実際,日本では2010年以降,冷夏は発生していないが猛暑は頻繁に発生している.2010年以降,亜熱帯ジェットと極前線ジェットのダブルジェット構造が強まり,極前線ジェットが日本の北に蛇行した結果,対流圏上層に高気圧が形成された.この高気圧は下層ほど南に傾くような構造をしており,かつ日本付近まで達している.冷夏の主な原因として知られるオホーツク海高気圧は近年頻繁に発生しているが,この南北傾斜高気圧が冷たい親潮上からの寒冷移流を防いでいるため冷夏とはならない.また,近年は親潮が高温化しているため,寒冷移流も弱まっている.加えて,熱帯由来のテレコネクションパターンとして太平洋-日本パターンも,この高気圧の影響により弱まっている.この気候変化への理解が深まれば,ユーラシア大陸北東部における南北傾斜高気圧の傾きとそれに伴う異常な夏の天候の理解につながるだろう.