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[ACG34-P03] 地球システム統合モデル開発と長期的将来気候変動シナリオ分析の研究
キーワード:地球システム、人間活動、気候変動
パリ目標の実現に向けて、国内外で脱炭素に向けた動きが加速している。例えば日本は、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること(カーボンニュートラル)を目標としている。このため、脱炭素社会がどのようにして実現されるのかを示すことは非常に重要な課題である。この一方で、排出ギャップ報告書によると、パリ協定で定められた目標を実現するために必要な排出削減量と、現状の排出削減量には、非常に大きなギャップがあることが示されている。このため、いったん気温目標を超えた後に目標気温を達成する可能性(オーバーシュートシナリオ)について調べることや、目標の通りに脱炭素社会が実現しない場合のリスクを示すことも重要な課題である。脱炭素社会が実現しない場合には、長期的な気候変化により、非常に大きな問題が生じる可能性もある。脱炭素社会が実現しない場合の大きなリスクを示すことは、脱炭素社会の必要性を示すことにもつながる。
1) パリ協定で定められた気温目標を達成するようなスピードで脱炭素社会を実現する道筋を示すこと、2) いったん気温目標を超えた後に目標気温を達成する道筋を示すこと、あるいは3) 脱炭素社会が達成されない場合に生じる問題を示すことのためには、地球システムの複雑な挙動を考慮するとともに、社会・経済に関係する人間システムの複雑な挙動を考慮する必要がある。地球システムは様々な形で人間システムに影響を及ぼし、逆に人間システムは様々な形で地球システムに影響を及ぼすことから、私たちは地球システムと人間システムの相互作用を考慮することのできる統合的なモデルの開発をおこなっている。これまでに、陸域の物理過程と生態系における物質循環、人間による水管理、作物の成長、土地利用の変化を考慮することのできる陸域統合モデル MIROC-INTEG-LAND (Yokohata et al. 2020, GMD, https://doi.org/10.5194/gmd-13-4713-2020 ) を開発した。さらに、最新の地球システムモデル MIROC-ES2L (Hajima et al. 2020, GMD, https://doi.org/10.5194/gmd-13-2197-2020 ) に水管理、作物成長、土地利用モデルを結合した地球システム統合モデル MIROC-INTEG-ES の開発を進めている。この発表では、MIROC-INTEG-ES の開発の現状を紹介する。また、脱炭素社会が実現しない場合を想定した、長期的な地球システム変動についての分析を紹介する。後者では、2100年を超える気候シナリオ(Extended RCP)のもとでの大気・海洋・陸域における物理・物質循環過程を評価し、脱炭素社会が実現しない場合のリスクを示す研究である。
1) パリ協定で定められた気温目標を達成するようなスピードで脱炭素社会を実現する道筋を示すこと、2) いったん気温目標を超えた後に目標気温を達成する道筋を示すこと、あるいは3) 脱炭素社会が達成されない場合に生じる問題を示すことのためには、地球システムの複雑な挙動を考慮するとともに、社会・経済に関係する人間システムの複雑な挙動を考慮する必要がある。地球システムは様々な形で人間システムに影響を及ぼし、逆に人間システムは様々な形で地球システムに影響を及ぼすことから、私たちは地球システムと人間システムの相互作用を考慮することのできる統合的なモデルの開発をおこなっている。これまでに、陸域の物理過程と生態系における物質循環、人間による水管理、作物の成長、土地利用の変化を考慮することのできる陸域統合モデル MIROC-INTEG-LAND (Yokohata et al. 2020, GMD, https://doi.org/10.5194/gmd-13-4713-2020 ) を開発した。さらに、最新の地球システムモデル MIROC-ES2L (Hajima et al. 2020, GMD, https://doi.org/10.5194/gmd-13-2197-2020 ) に水管理、作物成長、土地利用モデルを結合した地球システム統合モデル MIROC-INTEG-ES の開発を進めている。この発表では、MIROC-INTEG-ES の開発の現状を紹介する。また、脱炭素社会が実現しない場合を想定した、長期的な地球システム変動についての分析を紹介する。後者では、2100年を超える気候シナリオ(Extended RCP)のもとでの大気・海洋・陸域における物理・物質循環過程を評価し、脱炭素社会が実現しない場合のリスクを示す研究である。