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[ACG37-01] GOSAT-GW衛星による温室効果ガス観測ミッション:概要と進捗
★招待講演
キーワード:温室効果ガス、排出量、パリ協定
2009年に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(もしくは「GOSAT」)以降、米国、中国、欧州において、主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)を観測する衛星が複数運用されるとともに、今後も各国による打上げが計画されている。我が国では、GOSATシリーズの3号機となる温室効果ガス・水循環観測技術衛星(Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle: GOSAT-GW)計画が進められており、温室効果ガス観測センサ3型(Total Anthropogenic and Natural emissions mapping SpectrOmeter-3: TANSO-3)が搭載されてCO2,CH4に加え二酸化窒素(NO2)が観測される予定である。打ち上げは2024年度が予定されており、設計寿命は7年以上となっている。衛星の軌道は、昇交点通過地方太陽時を13 時 30 分とする昇交軌道、軌道高度は約 666 kmである。なお、GOSAT-GW衛星にはTANSO-3センサに加えて、水循環変動の把握と予測研究のために用いられる高性能マイクロ波放射計3(Advanced Microwave Scanning Radiometer 3: AMSR3)センサも併せて搭載される予定である。TANSO-3センサには、GOSAT及びGOSAT-2で採用されているフーリエ変換分光器とは異なり、回折格子型の分光器が採用されている。これは、GOSAT及びGOSAT-2で行ってきた、全大気温室効果ガスの月別平均濃度の監視やグローバルスケールでの温室効果ガスの吸収・排出解析の継続に加え、より詳細に、国や都市の規模における排出量の解析を行うべく、空間的により詳細化した観測データを取得するためである。TANSO-3センサは、「広域モード」と「精密モード」の二つを有し、広域観測モードでは960 kmの観測幅を10 km分解能で面的に観測し、精密観測モードでは90 kmの観測幅を3 kmより高い分解能で詳細に観測する。GOSAT-GWのミッションとしては、(1) 全大気温室効果ガスの月別平均濃度の監視、(2) 国別人為起源温室効果ガス排出量の検証、(3) 大規模排出源等の検知、の3つが求められており、GOSAT及びGOSAT-2に引き続いてCO2の全大気平均濃度を監視していくこと、パリ協定に基づいて世界各国が作成・公表するCO2及びCH4排出量の検証において正確性、透明性および信頼性を向上させること、NO2観測の援用により大都市や大規模固定排出源からの排出について未知の排出源の検知や推計の高精度化を行うこと、が科学的な目標となっている。得られる成果は、パリ協定のもとで実施されるグローバルストックテイクにおいて各国が自ら設定する排出削減目標(Nationally Determined Contributions, NDC)を適切かつ野心的に目標設定する上で必要となる「現状の排出量の正確な把握」に重要な貢献となる。また、GOSAT-GWは、同様にCO2,CH4とNO2を計測するCO2Mよりも早く軌道に投入される予定で、国際的にも大きな役割が期待されている。