日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG37] 衛星による地球環境観測

2023年5月26日(金) 13:45 〜 15:00 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:沖 理子(宇宙航空研究開発機構)、本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)、松永 恒雄(国立環境研究所地球環境研究センター/衛星観測センター)、座長:久保田 拓志(宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)

14:15 〜 14:30

[ACG37-15] GSMaP雲移動ベクトルと降水クラスターの個別トラッキング手法の比較検証

*広瀬 民志1久保田 拓志1妻鹿 友昭2牛尾 知雄2 (1.国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構、2.大阪大学 大学院工学研究科)

キーワード:衛星観測、降水推定、降水トラッキング

全球衛星降水マップ(GSMaP)はPMW観測網の隙間を補間するため,MVKと呼ばれるアルゴリズムを用いて前後時間にPMW衛星が観測した降水雲の移動先を追跡している(Ushio et al. 2009)。MVKは静止気象衛星の連続した赤外画像観測を用いて雲移動ベクトルを計算しているため,上層雲の被覆率の高い熱帯域では周辺の中下の降水を上層雲の移動方向に誤って動かしてしまう場合がある。ForTraCC(Villa et al. 2008)は個々の降水クラスターを個別にトラッキングする手法である.ForTraCCは各降水クラスターの疑似的な重心位置を計算し,その移動先を過去の移動履歴から予測している.そのため上層雲にあまり左右されることなく中下層の降水をトラッキング可能である.本研究ではこのForTraCCを用いてGSMaPの雲移動ベクトルを改良するために,熱帯域におけるGSMaP雲移動ベクトルとForTraCCの降水トラッキング性能の比較検証を行った.
GSMaP_MVKとForTraCCとで1時間後の降水雲の移動先を計算し,PMW観測を真値として降水トラッキング性能を比較した.その結果,熱帯域の特に浅い降水に対してはForTraCCの方が精度高いことがわかった.一方でForTraCCは降水強度の時間変化を考慮しないため,RMSEで見るとGSMaP_MVKの方が精度が高かった.またForTraCCの重心位置移動ベクトルを用いてGSMaPの雲移動ベクトルを補正した結果,特に熱帯域の浅い降水に対してGSMaP_MVKのトラッキング精度が向上するという結果が得られた.