日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG38] 海洋と大気の波動・渦・循環の力学

2023年5月22日(月) 13:45 〜 15:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:青木 邦弘(気象庁 気象研究所)、長船 哲史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久木 幸治(琉球大学)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)、座長:青木 邦弘(気象庁 環境・海洋気象課)、長船 哲史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久木 幸治(琉球大学)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)

14:45 〜 15:00

[ACG38-11] 成層圏突然昇温に先行する解析アンサンブルスプレッドの前駆シグナル

*山崎 哲1野口 峻佑2 (1.海洋研究開発機構 アプリケーションラボ、2.九州大学 理学研究院 地球惑星科学部門)

キーワード:成層圏突然昇温、アンサンブルカルマンフィルター、大気再解析

実験的全球アンサンブル再解析 ALERA (AFES-LETKF experimental ensemble reanalysis) における,成層圏突然昇温時の解析スプレッドの振る舞いについて調査した.成層圏を 解像する鉛直層数を有する再解析システムを用いて,2018 年 12 月–2018年12月〜2019年1月と 2019年8月〜2019年9月の間に両半球で発生した2つの成層圏突然昇温現象(SSW)に対するアンサンブルスプレッドの振る舞いを調査した.SSWが発生する約1週間前の間にアンサンブルスプレッドが極大となるシグナルが見られた.このシグナルは成層圏上・中部でのみ顕著で,下部成層圏や上部成層圏では見られなかった.このスプレッドのシグナルに関係して,再解析システム内での解析インクリメントが,予報による修正に匹敵するオーダーとなっていた.このことから,解析スプレッドに前駆 的に現れるシグナルは成層圏突然昇温を再現するための解析場のアップデートを促進するように働いていた.解析アンサンブル摂動場のジオポテンシャル高度場についての主成分分析によって,シグナルが成層圏で等価順圧的な構造と,解析アンサンブル平均場の分布に対して東西に 90°位相がずれた構造を持っていることがわかった.さらに,順圧不安定の 必要条件である渦位あるいは絶対渦度の南北勾配の逆転が中~上部成層圏で見られた.この構造の特徴から,解析アンサンブル摂動(スプレッド)場に現れるシグナルは成層圏内部での順圧不安定に起因することが示唆された.